
くらしスペシャリスト#021作詞家岩里 祐穂さん

Vol.5
片付けがはかどり、
空間をおしゃれにする収納の楽しみ方
「好きなものに囲まれて暮らしたい」という岩里さんの理想を実現するのは、素敵なインテリアだけではありません。収納がうまくいってこそ、ものが多くてもスッキリした空間を実現できるのです。今回は、岩里さんの収納の考え方についてお聞きしていきます。
"使う場所の近くにしまう場所"を収納の基本に
Vol.4で「家事は苦手」と告白した岩里さんですが、一方で収納について考えるのは大好きだと言います。「基本的に部屋は片付いていないと気が済まない性格なのに、家事が苦手で時間の使い方も上手じゃないから、片付けの時間が取れないのが悩みでした」。前の家で、そんなジレンマを抱え続けて5年、ついに片づけをスムーズにする収納の大改革を決行した岩里さん。「5年間、家族の誰が、どの場所で、何を使うかを観察していたら、使う場所の近くにしまう場所を設ければいい、というルールが見えてきました」。その結論をもとに、約1カ月かけて作り上げた岩里さん独自の収納システムはたちまち評判になり、テレビや本で紹介されるほどに。現在のお住まいを建てる際、このシステムを根本的なところから見直し、さらにパワーアップさせたものになっています。「まず、いわゆる納戸のような大きな収納をつくらないと決めました。なんでも放り込めるようでいて、大きさの分整理が大変だし、ストックしたのも忘れがちになりますから」。そこで「誰が」「どこで」「何をするか」を考えながら、その動線上に使いやすいサイズの収納を配置。さらに、お気に入りの収納家具を随所にちりばめています。

キッチンから洗面室へ抜ける動線上に2つある収納庫。冷蔵庫となりの収納庫(ブラウンの扉)は、小さなパントリーとして食品類のストックや、家族が普段よく使うサプリメントや常備薬などをしまい、洗面室近くの収納(グレーの扉)には掃除機などの掃除用品がしまってあります。


玄関近くの収納庫は、階段下のデッドスペースとつなげて納戸代わりに。工具や脚立、裁縫セット、麻雀台、スーツケースなど、大きなものやたまにしか使わないものを集約して収納しています。収納庫に対して収めるものが小さな場合でも、棚やミニチェストを活用して分類することで、スッキリと取り出しやすい収納が実現します。

「収納のことを考えるのは楽しい!」という岩里さん。レジャーの予定を語るように、収納プランについてお話しくださいました。
出しっぱなしでインテリアになる造作家具
収納にこだわっている岩里さんですが、今の家に収納スペースがたっぷりあるわけではなく、むしろ以前の住まいよりも減らしたのだそうです。というのも「収納庫ばかりをつくって、せっかくの家族のための空間が狭くなっては本末転倒」というのが岩里さんの考え。そこで、リビング・ダイニングや仕事部屋には、場所やサイズ、デザインまで計算しつくされた造り付け家具やオーダー家具を設置しました。いずれも岩里さんのインテリアと収納に対する情熱が伝わってくるものばかり!さっそく写真とともに紹介していきましょう。
◎ ダイニング奥の壁面収納
トップ画像で岩里さんの後ろにあるのが、ダイニング奥の壁面に設えた飾り棚。同じく音楽関係の仕事をしているご主人が所蔵するレコード盤を収納するため、1マスのピッチはレコードの大きさに合わせました。


サイズの基準になったのは、大切にコレクションしているレコード盤。「ここに、前の家から使っているお気に入りのミニチェストがすっぽり収まったのは、奇跡でしたね」。エアコンを組み込んだり、光を取り込む窓を備えられたのも、造り付けならでは。


最下段は、引き出し式にして、ダイニングテーブルで使うテーブルクロスやランチョンマット、紙袋などを収納。上から見て選びやすいよう、立てて収納しています。
◎ AVボードの両サイドに、さりげない引き出しを配置
先ほどのダイニング側の飾り棚の向かい側には、テレビ台を設置。両サイドの引き出しには、カーテンやマルチカバーなどの大物ファブリックを収納しています。


暖炉をイメージしたというテレビ台周辺の造り付け収納。引き出しには、ひざ掛けなどリビング周辺で使うファブリックを収納しています。その上のスペースは、グリーンやオブジェを飾るスペースとして活用。
◎ 実用とインテリアのバランスを兼ね備えるヴィンテージロッカー


リビング中央には、ヴィンテージのスチールロッカーを設置。「アンティーク風のインテリアで統一するとメリハリがなくなりがちなので、あえてスチール感を強調したロッカーとテレビ横のスタンド照明を "はずしアイテム"として置きました。ロッカーの中には、リビング・ダイニングで使う花器やラグを収納しています。
◎ 玄関には、トリックのような扉がある靴収納
玄関正面の目立つ場所にある靴収納は、大小のさまざまな扉が並んだようなデザインに。実際には上下2段の2枚扉で、上段はご主人、下段は息子さんと分類されています。まるでトリックのような扉は、キッチンや洗面室にもあり、収納機能もビジュアルも譲らない岩里さんのこだわりに、遊び心が感じられます。


一見、6つの収納があるように見ますが、実際は2枚の扉。「最初は普通の扉にしようと思いましたが、隣の扉と同じようなものが2枚並ぶのは、おもしろくないな、と思って遊んでみました」。
◎ インスピレーションをかき立てる仕事部屋には、大好きなディテールを実用的に

岩里さんの仕事部屋にある書類チェストは古材でオーダーしたもの。引き出しは使用頻度の高いA4サイズに対応しています。「仕事場は私にとって、新たなものを生み出す大切な空間だから、好きなものだけにしたいの」と岩里さん。
●協力:佐々木正明建築都市研究所(設計)、ファクトリー・ツール(内装・建具)、小川建設株式会社(施工)

言葉をつむぐようにインテリアを楽しむ専門家
作詞家 岩里 祐穂さん
作詞家。シンガーソングライターを経て、1983年作詞家デビュー。1989年、今井美樹『瞳がほほえむから』はランクイン50週のロングセールス、『PIECE OF MY WISH』はミリオンセラーとなる。近年の代表作として、ももいろクローバーZ『サラバ、愛しき悲しみたちよ』、Sexy Zone『Cha-Cha-Chaチャンピオン』、中川翔子『ドリドリ』など。そのほか『創聖のアクエリオン』『海賊戦隊ゴーカイジャー』。35周年記念アルバム『Ms.リリシスト』を昨年リリース。9/9(土)には森雪之丞を迎え、第4回トークライブを開催する。ライフスタイルについての著書『いいかげんに片づけて美しく暮らす』(集英社文庫)などエッセイストとしても活躍中。
オフィシャルサイト http://www.yuhoiwasato.com/
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