左官職人

久住さんの顔写真

くらしスペシャリスト#003 左官職人 久住 有生(くすみ なおき)さん

Vol.2 左官職人の道具と究極の名人技
SPECIAL MOVIE : 久住さんが語る「塗り壁の良さ」

世界中を飛び回って見えてきた、日本人の繊細な感性。

日本に留まらず世界中を飛び回って歴史的な建造物の修復をはじめとする、さまざまな建物の壁を塗ってきた久住有生(くすみ なおき)さん。世界の左官技術を見てきた久住さんは、「日本人の繊細な感性と技術を突き詰めていく姿勢は世界に類を見ません。壁へのアプローチも異なりますね」と話します。久住さんが例に挙げるのは、ヨーロッパの文化財である教会の修復に携わったときのこと。「現地の職人は鏝(こて)ですくった材料を壁にバンバン投げつけ、土がぼたぼたと地面に落ちても全く気にもしません。でこぼこに仕上がった壁の表面を、ガリガリ削って真っ直ぐにする左官施工だった」と話します。

話をする久住さんの写真

「日本の左官職人の技術は、世界でナンバーワンだと思う」。

一方日本では、高度な左官技術が必要とされる現場であるほど、「服もそれほど汚さず、地面には何も落とさない」ものだそう。「日本の職人は目と手だけに頼って、1ミリも狂わずに完全に真っ直ぐに塗るという訓練を行います。そのような技術では日本の左官職人は世界でナンバーワンと言えると思います」。スペインで開催された技術競技会に参加した久住さんは、ヨーロッパの職人に比べると体格も小さかったのですが、「3分の1の大きさの道具で3倍の速さで塗る」と評判に。現地の多くの職人が久住さんに指導を請うといった展開になったそう。そんな久住さんが、最も難しい技術が必要とされる建物として挙げたのが日本の伝統的な茶室です。

仕事道具の写真

歪んだ茶室空間を真っ直ぐに見せる熟練の技。

日本古来の建築、中でも茶室は自然のカタチそのままを尊ぶことを大切にし、柱に加工を施さず、上は細く下が太いまま、ときには曲がったままその場に立てます。そのような柱と柱の間の壁を普通に真っ直ぐ塗れば、空間が歪んで見えてしまいます。「壁の真ん中を膨らませるようにして塗ると、目の錯覚で真っ直ぐに見えるんです」と久住さんは話します。正座した目線で空間がどう見えるかを考え、微妙な壁の曲面を創っていくのは、優れた腕を持つ熟練した職人しかできない難しい技。「息を止めて、常時同じスピードで鏝を動かします。極度の集中力が必要な緊張する作業」だそう。久住さんが茶室の現場に向かうときは、鏝やつまみ鏝といった道具を100点から200点を用意し、塗る場所や面積、カーブに合わせて使い分けるそうです。

仕事をする久住さんの写真
久住さんの仕事風景写真1
久住さんの仕事風景写真2
久住さんの仕事風景写真3
久住さんの仕事風景写真4

「塗り壁の空間は空気の質が明らかに違いますね」。

特別な技術が必要とされる茶室だけではなく、様々な建築の外壁や内装に塗り壁は使われます。「コンクリートと違って、土を材料とし人が手で塗る壁には温かみがあります」と久住さんは話します。「『何だか気持ちが良くて、落ち着きますね』とおっしゃる方が多いですね。吸湿性に優れニオイを吸着してくれる塗り壁の空間は、空気の質が明らかに違います」。結露によるカビに悩まされていた家では、クロスをはがして壁を塗ることで長年のお悩みを解消、テレビの取材では音響担当の方が「土壁のところはとても音がいい」と話していたとか。美しさだけでなく、住まいここちに多大な影響を与える塗り壁。やがて自分が施主となって家を建てる・リフォームするとき、左官職人とどのように関わると良いか久住さんに伺ってみました。

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施主が自分で壁を塗れば満足感もひとしお。

家づくりは一生に一度の大イベント。間取りやインテリアだけでなく、壁についても事前によく調べておくことが後悔しないポイント。「雑誌の切り抜きなどを使って好みを具体的に伝えてもらえると考えやすいです」と久住さん。また壁の強度への希望も左官職人が気にする点です。「傷はついても時間とともに良い風合いになっていくと考えるなら、塗り壁独特のやわらかな雰囲気を出すことができます」。さらに、左官工事に参加して壁を自分で塗ると、愛着もひとしお。「『塗ってみますか』と水を向けると1時間ぐらい作業を続けていらっしゃることが多く、よほど楽しいのだと思います。『完成した家の中で一番好きなのは、もちろん自分が壁を塗ったその部屋』というケースが多いですね」。続く動画では久住さんが語る塗り壁の良さと、完成した個人邸のギャラリーの壁面をご覧いただけます。 (完、2014年8月31日取材)

職人の技

おしえて、久住さん
塗り壁のあるくらしQ&A

塗り壁の写真

久住さんに「塗り壁の良さ」「塗り壁に適する照明」「家を建てるときの心構え」について伺いました。久住さんの手で完成した、個人邸ギャラリーの壁もご覧いただけます。

SPECIAL MOVIE

久住さんの写真

「塗り壁」を極めたスペシャリスト
左官職人 久住 有生(くすみ なおき)さん

1972年、兵庫県淡路島生まれ。父はカリスマ左官として知られる久住 章(くすみ・あきら)。2代続く左官の家に生まれ、幼少の頃より鏝を握る。18歳で親元を離れ、各地で修行し、23歳で独立。ドイツ、フランス、日本(京都)などで左官技術を磨き、歴史的建造物の修復の仕事にも携わる。商業施設や教育関連施設、個人邸の内装や外装を手がけることも多く、伝統的な左官技術とオリジナリティ溢れるアイディアが、国内外での大きな評価につながっている。
http://www.kusuminaoki.com/

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Vol.1塗り壁が拓く、
美・インテリア

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