住まいづくりの基礎知識

法律

建築基準法改正による「シックハウス対策」

建築基準法の改正で、2003年7月1日から「シックハウス対策」が義務づけられました。

改正建築基準法の規定により、「シックハウス対策」が強化されます。
それによって、2003年7月1日以降に着工する建物は、内装の仕上げなどに制約が課されるなどシックハウス対策が義務づけられます。
施工日以降の着工で打ち合わせや設計を進めている建物は、この改正建築基準法を満たさなければなりません。

Q.なぜ、シックハウス対策のために建築基準法が改正されたのですか?

A.いま、シックハウス症候群が大きな社会問題になっているからです。

●国民生活センターに寄せられたシックハウスに関する危害

国民生活センターに寄せられたシックハウスに関する危害のグラフ:住宅の購入やリフォームに伴うシックハウスが大きな割合を占めています。

家の購入や新築、リフォームなどをきっかけに、部屋にいると頭痛がする、めまいがする、セキが出る、目がチカチカするなどの「シックハウス症候群」に悩む人が、グラフに見られるようにとても増えています。 シックハウス症候群の背景は大きく3つに分けられます。
「住宅の気密化」。
「化学物質を多用する製法、工法の普及」。
「化学物質を含む生活用品の増加」。
1997年に厚生省(現・厚生労働省)がホルムアルデヒドの室内濃度指針値を示したり、1998年には健康住宅研究会による設計・施工ガイドラインが示されるなど、これまでにも行政と業界による積極的な取り組みが行われてきました。

●家の中の化学物質発生要因は、建材を含めていろいろあります。

室内の要因を示す図。カーテン、家具、合板、壁紙用接着剤、防虫シート、塗料、防蟻剤、殺虫剤、衣類

室内の空気汚染をもたらす物質は多種多様にあり、その結果生じるシックハウス症候群も、そのすべてが原因ということもできますが、厚生労働省の参考定義にもあるとおり、一般的には、「建材・内装材等に含まれる化学物質」が問題視されています。
なお、化学物質は建材や内装材だけでなく、生活者が室内に持ち込む家具や繊維製品、日用品なども発生源となりえることを理解しておくことも大切です。

●これまでにも指針値は示されてきました。これからは法律で「シックハウス対策」が強化されます。
厚生労働省ではホルムアルデヒドをはじめとした化学物質の室内濃度指針値を示し、国土交通省では住宅性能表示制度で評価される性能項目に「空気環境」を含めるなど、これまでも行政の取り組が進められてきました。
でもそれに対応するかどうかは業者や施主の任意の判断によるものでした。しかし今後は強制力のある法律の規制により「シックハウス対策」が強化されます。

Q.建築基準法改正のポイントはなんですか?

A.次の2つの化学物質が規制の対象になります。

●クロルピリホス
有機リン系の殺虫剤などに含まれる物質で、害虫駆除などに用いられることが多く、建築物では木材の防腐・防蟻対策用に塗布されています。人体に入ると、けいれんやめまい、吐き気、頭痛などを引き起こします。

こんな所に用いられています。
防蟻剤・木材保存剤 クロルピリホスを添加した建材は使用禁止

●ホルムアルデヒド
強い刺激臭があり、シックハウス症候群を引き起こす化学物質の代表的存在とされています。接着剤などの原料として、合板などさまざまな建材に用いられています。目や鼻に刺激を与え、セキ、くしゃみを生じ、ひどい場合は呼吸困難になることもあります。

こんな所に用いられています。
合板、パーティクルボード、MDFなどに用いられる合成樹脂や接着剤の原料。
一部ののりなどの防腐剤や繊維の傷み防止加工剤など。
規制!!

改正建築基準法における、ホルムアルデヒドを発散する建築材料の区分

ホルムアルデヒド発散建築材料が発散速度によって区分され、区分ごとに規制されます。
ホルムアルデヒド発散建築材料は告示によって17品目が示されています。

ホルムアルデヒドの
発散速度
告示で定められている建築材料 JIS・JASのホルムアルデヒド放散量
(水中濃度)
名称 対応する規格・認定
  旧JIS・JAS 平均値 最大値
0.005mg/m2h以下 (規制対象外建材) JIS・JASの
F☆☆☆☆
および大臣認定品
-- 0.3mg/L 以下 0.4mg/L 以下
0.005mg/m2h超
~0.02mg/m2h 以下
第三種ホルムアルデヒド発散建築材料 JIS・JASの
F☆☆☆
および大臣認定品
E0、FC0 0.5mg/L 以下 0.7mg/L 以下
0.02mg/m2h 超
~0.12mg/m2h 以下
第二種ホルムアルデヒド発散建築材料 JIS・JASの
F☆☆
および大臣認定品
E1、FC1 1.5mg/L 以下 2.1mg/L 以下
0.12mg/m2h 超 第一種ホルムアルデヒド発散建築材料 無等級 E2、FC2 5.0mg/L 以下 7.0mg/L 以下
●除外規定
建築物の部分に使用して5年経過したものについては制限されません。
●大臣認定品
JIS・JASのF☆…を取得していない材料(海外からの輸入建材など)でも所定手続きにより大臣認定品として第二種・第三種および 規制対象外建材(F☆☆☆☆相当)とみなされます。
●JIS・JASについて
建築基準法改正に対応して、2003年3月に改正され、放散量規格が変更されるとともにF☆…で表示及び規格の統一が図られています。
「発散」と「放散」は字義的には同じと考えて差し支えありませんが、物理量単位としては建築基準法は発散速度(mg/m2h)であるのに対して、JIS・JASは放散量(水中濃度・mg/L)です。

ホルムアルデヒドは3つの側面から規制されます。

(1)ホルムアルデヒドを発散する内装仕上げの面積を制限
居室の種類と換気回数に応じて、内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積が制限されます。ホルムアルデヒドを発散する建材はJIS・JAS及び大臣認定によって、発散量の少ない順にF☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、(F☆)と等級づけされ、その等級によって使用できる面積が異なります。

  • ※JIS・JAS及び大(F☆☆☆☆)臣認定の最高等級は、 面積制限を受けません。
床面積の二倍までOK

(2)常時換気できる設備の設置を義務づけ
ホルムアルデヒドを発散する建材をまったく使用しない場合でも、原則としてすべての建築物に一定以上の換気能力を持ち、常時換気ができる設備の設置が義務づけられます。建材から発散されるホルムアルデヒドが微量でも持ち込み家具などから発散される可能性があるためです。

  • ※サッシを用いない土壁真壁造のようなすき間の多い建築物などは対象外
住宅居室では0.5回/時以上の常時換気設備が必要です。

(3)天井裏や床下、収納部材の内部の制限
下記の1.~3のいずれかの対策をする必要があります。
天井裏、作り付け収納部材の内部などの下地材(柱や梁のような「軸材」は除き、構造用パネルなどの建材が対象)もホルムアルデヒド発散の少ないF☆☆☆以上の建材を用いなければなりません。
居室へのホルムアルデヒドの流入を抑制するために、気密層または通気止めによる対策をしなければなりません。
機械換気設備を設け、天井裏なども換気できるものにしなければなりません。

F☆☆☆以上の建材を使用。気密層や通気止めで居室と区画。換気対策いずれかの対策が必要です。

Q&A

Q.いつの物件から改正建築基準法が適用になりますか?

A.この法律は2003年7月1日に施行され、基本的には7月1日以降の着工分からの適用になります。

詳しくは管轄の建築指導課にご確認ください。

Q.改正建築基準法を満たせば、「シックハウス対策」は安心ですか?

A.改正建築基準法による規制対象物質はホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質です。

このほかにもシックハウス症候群や化学物質過敏症の主要原因とみられているトルエンやキシレンなど様々な物質(VOC)もあります。すなわち建築基準法を満たせば、それで全ての室内空気汚染が防止できるということではありません。
また、建材や住宅設備だけでなく、家具類やカーテン、日用品なども化学物質発生の要因と見られているために配慮が必要です。普段から窓を開けて空気を入れ替えるようにし、こまめな換気を心がけましょう。

  • ※改正建築基準法で定められたホルムアルデヒド対策を守れば通常は、ホルムアルデヒドの室内濃度が厚生労働省の指針値(0.08ppm)を超えることはないというのが国土交通省の考えです。ただし、特異な気象条件やシックハウス問題への配慮を欠いた建築物の使い方によって例外的に室内濃度が指針値を超えることは避けられないものとしています。

Q.キッチン・室内ドアなどの製品(二次加工品)の等級表示はどうなりますか?

A.業界団体による製品ベースの自主表示制度が認められています。

キッチンや室内ドアなどの住宅部品の場合、そこで使われているMDFなどの基材、接着剤、塗料などの等級がすべてF☆☆☆☆であれば、製品として、日本住宅設備システム協会、日本建材産業協会、リビングアメニティ協会、キッチン・バス工業会 以上4団体による「住宅部品表示ガイドライン」に基づいて、カタログなどにF☆☆☆☆表示がされます。

●「住宅設備・建具・収納のホルムアルデヒド発散区分に関する表示ガイドライン」
(略称:住宅部品表示ガイドライン)に基づくユニット製品についての説明書等の記載方法(日本住宅設備システム協会、日本建材産業協会、リビングアメニティ協会、キッチン・バス工業会)
【対象】
住宅部品、設備機器、建具、収納など、複数の建築材料を工場で組み立てたユニット製品について、完成品を対象にホルムアルデヒド発散区分を説明書等に記載する場合、その記載方法のガイドラインが上記の4団体より示されています。(製造者自らの責任において行い、登録制度は採りません)
内装の仕上げに該当する部分と、天井裏等の下地に該当する部分に分けて記載します。
【記載方法】
製品を構成するホルムアルデヒド発散建築材料の区分を個々に確認し、複数の等級が混ざっている場合には、最も放散量の多い等級で記載します。
【記載の例】
商品名:○○○収納
○○株式会社
F☆☆☆☆ (下地部分 F☆☆☆)
住宅部品表示ガイドラインによる
ロット番号、製造年月日など

●内装仕上部分

ホルムアルデヒド
発散建築材料
発散区分
PB F☆☆☆☆
MDF F☆☆☆☆
合板 F☆☆☆☆
接着剤 F☆☆☆☆

●下地部分

ホルムアルデヒド
発散建築材料
発散区分
PB F☆☆☆
接着剤 F☆☆☆☆

○○ - ○○○○ - ○○○○(電話番号など)
*製品・梱包・施工説明書などで全項目が工事現場で確認できる表示とする
この他にも日本塗料工業会や日本接着剤工業会など各業界団体等による表示制度があります。

Q.リフォームの場合でも改正建築基準法は適用されるのですか?

A.基本的には新築の場合と同様の規制があります。

ただし施工して5年以上経過しているホルムアルデヒド発散建築材料についてはF☆☆☆☆とみなせます。一方、施工後5年以内のホルムアルデヒド発散建築材料については、ホルムアルデヒド発散等級が確認できない場合には無等級とみなされます。
換気設備の設置については、経過年数に係わりなく改正建築基準法を満たす必要があります。

Q.換気設備によっては、ドアの通気措置が必要になりますが、それはどのような措置ですか?

A.居室と廊下などの間に換気経路を設ける場合に、室内ドアに1cm程度のアンダーカットや換気ガラリを設けて必要な通気を確保することです。

パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部の内装ドア(開き戸)は、ドアの下部に1cmの隙間が確保できる商品仕様です。(2003年5月1日生産分より)(この隙間が不要の場合は、現物で枠の下端を5mmカットすることで対応できます。)

Q.廻り縁、幅木、窓枠、建具枠などは、内装仕上げの面積制限の規制対象外部分ですが一つひとつが小さくても合計するとけっこうな面積になると思います。どのくらいの面積になりますか?

A.6畳間に内装ドア1枚、1間のクローゼット扉、1間の掃き出し窓をつけた場合の廻り縁、幅木、窓枠、建具枠の面積は床面積の20%程度になりドア1枚よりも多くなります。

パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部ではこれらの法律の対象外の部材もF☆☆☆☆として商品をご用意いたします。

Q.持ち込みの家具は法律の対象にならないのでしょうか?

A.国土交通省によれば、「家具等については、建築基準法で規制することはできないが、適切な家具の選択等について周知を図り、良好な空気質の確保に向け積極的な取組を促進していく」としています。

また(社)全国家具工業連合会では、「家具のシックハウス対策指針」を制定しシックハウス対策に取り組んでいます。

Q.トルエン、キシレンなどは対象にならないのですか?

A.今回の対象はホルムアルデヒドとクロルピリホスだけです。

今後規制の対象が増えてくる可能性はあります。

この内容は2004年2月16日現在のものです。

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