「きれいな防水の部屋をつくろう」という合い言葉のもとに、バスルームをデザインし直すプロジェクトはスタートしました。一般的には絶対に防水機能の不良で問題を出さないために壁と壁のつなぎ目や、壁と床、壁と天井のつなぎ目にはめ込むパッキンをしっかりとした太さではめ込みますが、そうするとどうしてもユニットバス的な見え方になってしまいます。そこでそのパッキンに防水機能をしっかりと持たせつつも目立たない細さまで追い込む技術検討が成されました。これは「隅と縁を整える」というもう一つのキーワードになりました。一見分かりにくいけれども、醜い細部を丁寧に整えることで結果として上質なバスルームをつくることに繋がりました。そして、バスタブやカウンターのかたちに特徴を持たせた余計なかたちのデザインをやめ、シンプルで上質な空間をつくることを目指しました。 きれいな部屋に配置された単純なかたちの浴槽や独立した薄いカウンターはi-XのICONとなりました。ドアフレームの厚みやバランス、ミラー、 バスタブの縁の厚み、床のパターン、あらゆる細部と全体の調和を見極めた質の高いデザインは多くの人の共感を得ました。奇をてらわないその上質な空間は開発から7年を経た今でも色褪せることなく、その美しさにおいて他の追随を許しません。また、i-Xはユニットバスにおける美しい防水部屋としてのプラットフォームとなりました。シンプルで上質なプラットフォームは、やがて訪れるであろうインテリジェントウォールやユニバーサルデザインなどのバスルームの未来に美しく柔軟に対応することが可能です。そして「きれいな防水の部屋」ができれば壁や床の色や素材を変えて異なる表情をつくり込むことも容易にできます。部屋のインテリアから繋がるバスルームは部屋とマッチした空間として孤立せず外から見ても美しい空間として生まれ変わりました。きれいなシャンプーのボトルやスツール、天井からの光をきれいに引き立てる生活の背景になりました。i-Xは上質な防水の部屋としてそれぞれの人の生活の背景として美しく溶け込みます。Octorber. 2013プロダクトデザイナー 深澤直人
深澤直人 Naoto Fukasawa 2003年 Naoto Fukasawa Design 設立。卓越した造形美とシンプルに徹したデザインで、イタリア、フランス、ドイツ、スイス、北欧、アジアなど世界を代表するブランドのデザイン、国内の大手メーカーのデザインとコンサルティングを多数手がける。1999年からは人間の無意識の行為に着目しデザインするワークショップ「Without Thought」を毎年開催、書籍とともに発表を続ける。2010-2013年度グッドデザイン賞審査委員長。第5代日本民藝館館長。21_21 Design Sightディレクター。2014年多摩美術大学統合デザイン学科長就任予定。著書に「デザインの輪郭」(TOTO 出版)、共著書「デザインの生態学」(東京書籍)、作品集「NAOTOFUKASAWA」(Phaidon)、「THE OUTLINE 見えていない輪郭」写真家 藤井 保氏との展覧会を開催、同タイトル書籍を出版 (アシェット婦人画報社)。