知っておきたい、
老人ホーム選びのイロハ
column03
すっきり解決!
介護付有料老人ホームの
ギモン・不安Q&A
施設のサービスや費用などのシステム的な情報は理解できても、入居後のくらしをイメージすると、何気ない疑問や心配なことが湧いてくるもの。そんな、介護付有料老人ホームへの入居について、よくあるQ&Aをまとめてみました。
やっていけるか不安…
<くらし編>
「認知症」が年々進行して…入居は可能?
基本的に介護付有料老人ホームは老人福祉法の定める専門職の配置や設備・空間の確保をクリアしているので、認知症の方の受け入れは可能です。
ただし、認知症の状態によっては受け入れ不可のケースも…。症状は人によってさまざまですが、認知症の方が穏やかに暮らすには、24時間365日の見守りができる介護職員の存在が不可欠です。介護職員の人員配置が高いユニットケアを実施しているホームなら、より安心でしょう。
社交性に乏しく内気な性格。
周囲になじめる?
集団生活をイメージすると社交性が必要に感じられますが、老人ホームでは必ずしもそうではありません。
介護付有料老人ホームには介護の専門職が複数配置されています。
介護や福祉の理念には「声なき声に耳を澄ませる」という考えがあり、対象の方が自己主張をしなくても個人の人間性や性質を把握したうえで、その時々のお気持ちなどを察しながら適切な声掛けをする訓練を積んでいます。活動に参加したくない方に無理強いはしませんし、参加したいけれど行動に移せない方がいれば、さりげなく声をかけ促してくれるはずです。
入居してすぐに嫌になってしまったら…?
施設を気に入って入居したとしても、いざ暮らし始めてみるとイメージと違うということもあるでしょう。老人ホームに限らず、一般的な引っ越しでもそのようなことはあります。
どうしても退居したいという場合は、90日以内であればクーリングオフ制度が利用でき、それまでにかかった実費をのぞく前払い金が返還されます。
とはいえ、せっかく新生活をスタートしたのですから、まずは施設の職員に相談するなど改善策を探したいもの。また、そうならないためにも体験入居や施設見学を利用して、本人に合う施設かを確認し、より具体的にくらしをイメージしておくと良いでしょう。
本人がなんでも「自分でやりたい」と思う性格。介護付有料老人ホームは向いてない?
「介護」というと、身体を支えたり動作などを助けたりするイメージがあるかもしれませんが、介護には「見守り介護」といって、入居者自身で行う動作を見守る、という行為があります。
例えば、支えなしで散歩したい入居者が、身体状況としては「歩行時の転倒注意」が必要である場合、介護職員は何気ない会話をしながら歩行の様子を注視して見守っています。転倒せず歩けそうか、歩行能力は衰えていないか、など多角的な観点と高い介護スキルでサポートしているのです。
介護付有料老人ホームの介護サービスは24時間対応ですので、こうした見守り介護は常時行われています。その他の高齢者向け住宅では、介護サービスの提供時間が決まっていたり、自立を主軸として運営されていたりと、見守り介護が受けられない時間がある場合があります。こうしたサポートが必要だとお考えの方には、介護付有料老人ホームの24時間の介護サービスは大きな安心です。
医療・介護にまつわる心配…
<ケア編>
診察はかかりつけ医で受けたい…
ご本人の既往歴や性格を熟知しているかかりつけ医に診て欲しい、という気持ちは多くの方がお持ちです。
一方、介護付有料老人ホームへの入居後にかかりつけ医を利用できるかどうかは、施設によって異なります。希望する病院への通院の可否、通院できる場合はサポートの有無、往診の受け入れなどを確認しておくと良いでしょう。
なお、介護付有料老人ホームには提携している協力医療機関があります。常駐の看護職員との連携方法など、医療面でのサポート体制は入居前にチェックしたいポイントです。
日常的に医療的なケアが必要。
どこまで対応できる?
入居者の日々の医療的ケアは、医師の指導のもと、施設の看護職員が行います。対応できる内容は、日常生活を送るために必要とされる医療行為です。
かぜや便秘のときの食事や生活を調整することや、経管栄養注入や痰の吸引、インシュリン注射などがありますが、対応範囲は施設によって異なります。介護付有料老人ホームは看護職員が24時間常駐しているので、深夜や早朝のケアにも対応可能です。
入院した時はどうなる…?
ご家族に代わって入院先へのお見舞いや洗濯物の交換を行うなど、入院中のサポートを行っている施設もあります。
治療が終われば基本的に施設に戻れますが、長期の入院が見込まれる場合は、契約を解除するかどうかの相談が必要なことも。入居の際に取り交わされる重要事項説明書に記載があるので確認しましょう。
リハビリは、
どんなことをしてもらえる?
加齢とともに低下した身体能力の維持・向上のために、多くの施設でさまざまな機能訓練や活動を行っています。
介護付有料老人ホームには1人以上のリハビリ職員(機能訓練指導員)の配置が定められており、理学療法士や作業療法士などが担当しています。施設によってリハビリ内容や頻度などは変わりますが、歩行訓練や身体機能の訓練は理学療法士、脳トレのような認知機能訓練や日常生活の動作訓練なら作業療法士と、それぞれの専門領域からアプローチするリハビリが提供されます。
制限食や
介護食には対応してくれる?
食事は毎日の楽しみのひとつであり、健康に欠かせない大切なもの。長く暮らしていく中では、生活習慣病などに対応した療養食や嚥下・そしゃく力の低下に対応した形態食の対応が必要になることもあります。
介護付有料老人ホームでは、ほとんどの施設で栄養士による食事管理が行われています。とはいえ、施設の規模や設備によって、どこまでの個別対応ができるかはバラつきがあります。
こんなとき、あんなときはどうする?<その他編>
入居者の外出や外泊はできる?
面会に来たご家族と外食に出かけたり、記念日をご家族の家で過ごされたりと、そのニーズは多様でしょう。
介護付有料老人ホームで暮らす入居者が外出できる施設は多くありますが、外出・外泊できる時間や方法などは、施設ごとにルールが設けられています。入居者が一人で外出する際には、職員が一緒に付き添ってくれるなどのサービスを実施している場合も。入居者の安全・安心のためにも、ルールを守っての外出が大切です。
家族や友人が面会したり、宿泊したりできる?
介護付有料老人ホームでご家族が面会されることは日常的なことで、ほとんどの施設で面会が可能です。面会の時間や場所、人数などは施設ごとにルールが設けられています。インフルエンザなどの感染症の流行期には制限が設けられる場合もあるでしょう。
宿泊については面会よりも難しく、同室に宿泊できるのか、宿泊室があるのかなど施設によって対応に幅があります。いずれの場合も、ルールだけでなく集団生活の場を訪れる上でのマナーや周囲の方々への配慮が必要です。
施設見学チェックリスト
施設見学でチェックするポイントとは?
パンフレットやインターネットで情報は手に入れられても、やはり実際に現地に行ってみると、想像との違いに気づいたり、入居後のくらしのイメージが具体的になったりします。施設見学の際に、次のようなポイントを確認して、ご本人やご家族の希望に合った施設を選べるようにしましょう。
施設見学は、“食事時”に行くのがおすすめです。理由は、“食事時”は、忙しいからです。忙しい時こそ、その施設の介護・看護職員の教育レベルがよくわかります。
まとめ
大切なご家族の家となる介護付有料老人ホームでの将来を考えると、誰でもたくさんの疑問や不安が生まれてきます。安心して入居できるよう、より具体的な情報を得ることが大切です。インターネットでの情報を入り口に、パンフレットを取り寄せたり、実際に施設を見学したりするなど、一歩を踏み出してみましょう。希望に合う施設がきっと見つかります。
※記事の内容は2023年3月末時点のものです
監修者プロフィール
小嶋 勝利株式会社
ASFON TRUST NETWORK
常務取締役
1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。著書は『親を大切に考える子世代のための老人ホームのお金と探し方』(日経BP)など多数。