エイジフリー・ライフ コラム

種類の多い「高齢者向け住宅」の
ちがいをチェック

高齢者向け住宅には、公的施設と、民間施設があります。
公的施設は介護保険制度のもとでサービスを行う施設で、
「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保健施設」などがあります。
民間施設は対象者やサービスの種類など施設ごとにさまざまな違いを持ち、
多種多様なサービスが展開されています。
ここでは、施設選びの候補に挙がることが多い5種類の高齢者向け住宅について解説します。

contents目次
公的施設と民間施設
特別養護老人ホーム(特養)
介護付有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
グループホーム

公的施設と民間施設

高齢者向け住宅には、介護保険制度のもとでサービスを行う公的施設と、対象者やサービスの種類など施設ごとにさまざまな違いを持つ民間施設があります。

公的施設は、一般的に「特養」といわれる「特別養護老人ホーム」のほか「介護老人保健施設」、「介護医療院」などに分かれます。これらは、国や地方自治体、社会福祉法人が運営しているため、月々の費用が比較的低く設定されているのが魅力です。しかし、それらの多くは、サービスが画一化されていたり、入居手続きが煩雑だったりするため、不向きな方もいれば、入居者側のペースでスムーズに入居が進まないケースもあります。

一方、民間施設は、数も種類も豊富にあり、施設ごとに多種多様なサービスが展開されています。特に「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている介護付有料老人ホームの場合、介護度に応じて固定の介護保険自己負担額を支払うことで介護サービスを受けられるので、毎月、定額の費用負担で安心して入居することができます。

以下では、多くの公的施設と民間施設のうち、施設選びの候補に挙がることが多い5種類の高齢者向け住宅について解説します。

介護老人福祉施設
「特別養護老人ホーム(特養)」:公的施設

老人ホームの元祖ともいえる特別養護老人ホームは、社会福祉法人や自治体などによって運営される公的施設であり、できるかぎり自立した日常生活が送れるようになることを目指し、入浴や食事などのサポートや機能訓練、療養のケアなどを行う介護老人福祉施設です。

入居条件は原則、65歳以上で要介護度が3以上。認知症の有無や家族の状況などをもとに緊急度が点数化され、点数の高い方から優先的に入居できる仕組みになっています。そのため、要介護4~5かつ重度の認知症もあるなど、介護の必要性がより高い方が多く入居しています。

ただし特養では、しっかりした介護体制に対して医療的ケアが充実しているとはいえないため、夜間の医療処置などは受けられません。また、民間施設に比べて低コストではありますが、個室タイプのユニットケア方式※を選ぶ場合は、月額費用が割高になることがあります。

※ユニットケア方式…入居者10人前後を一つの「ユニット」とし、入居者の生活リズムなどを尊重しながら、個々の生活を手厚くサポートする様式。

特養の民間版に位置付けられる
「介護付有料老人ホーム」:民間施設

「介護付有料老人ホーム」は、介護保険における特定施設入居者生活介護の指定を受けている民間施設であり、外部の介護サービス事業者と契約しなくても、介護度を問わず、特養と同様に日常生活のサポートやケアを24時間受けられます。

介護付有料老人ホームには、要介護1以上の方を対象とする「介護専用型」、自立・要介護ともに入居できる「混合型」があります。介護サービスはもちろん、レクリエーションや設備面などのサービスも充実した施設が数多くあり、豊富な選択肢から選ぶことができます。

介護付有料老人ホームの種類
介護専用型
要介護1以上の方のみ入居可能。介護度が高くなっても必要な介助が受けられ、緊急時にも速やかに対応してもらえます。
混合型
自立と要介護の方、どちらも入居できます。例えば夫婦の一方は介護が必要で、もう一方は自立している場合でも、同時に入居することが可能です。
自宅での生活に近い過ごし方ができる
「住宅型有料老人ホーム」:民間施設

住宅型有料老人ホームと介護付有料老人ホームの違いは、「特定施設入居者生活介護」の認可を受けているかどうかです。

「有料老人ホーム」は、老人福祉法という法律で定められた「60歳以上の高齢者を一人以上入居させる」「食事、介護、洗濯、掃除、健康管理のいずれかを提供する」という要件を満たした施設のこと。特定施設の認可を受けていない住宅型有料老人ホームは、老人福祉法では有料老人ホームに含まれますが、介護保険上は、基本的に自宅と同様の扱いなのです。そのため、介護サービスを受けたい場合は、外部の事業所と契約してサービスを受けることになります。

高齢者がくらしやすい環境が整った
「サービス付き高齢者向け住宅」:民間施設

略して「サ高住」と呼ばれる「サービス付き高齢者向け住宅」は、2011年に登場しました。基本的に住宅型有料老人ホームと同じですが、有料老人ホームは「利用権」、サ高住は「賃貸借契約」と生活支援サービスの利用契約というように契約形態が異なります。

生活の質にこだわった環境が整えられ、定年後に悠々自適に暮らせる住宅が人気を呼んでいます。最近、増えてきたアクティブシニア向けマンションなども、このサ高住のカテゴリーに含まれます。

原則として介護を行わない施設なので、外部の事業所による介護保険サービスでの対応が難しいくらいに介護度が高くなった場合などは、住み替えなければならないことがあります。

家庭的な雰囲気で地域密着型の
「グループホーム」:民間施設

グループホームは「認知症対応型共同生活介護施設」とも呼ばれ、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。人との交流があるアットホームな環境の中で過ごすことが、心身ともに良い影響を与えると考えられています。

全国的に認知症の発症数は増加傾向にあることから、グループホームの数も最近は増えています。地域密着型サービスのため、原則として施設がある市区町村に住民票がある方が入居の対象となります。

高齢者向け住宅の比較表

特別養護老人ホームと介護付有料老人ホームは、入居者に必要な介護をいつでも受けられるのが魅力です。しかし、施設全体でみると実にたくさんの介護サービスを一人ひとりに行っているため、それらが滞りなく行き渡るように、施設側で個々の時間などを調整する必要があります。
食事や入浴など時間帯が決まっている活動を中心にその他のサービスを調整せざるを得ないため、個人の希望よりも施設側の都合が優先になる場合が多いでしょう。

これに対し、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、利用したい介護サービスを入居者が自由に選んで申し込みます。そのぶん、入居者は自分のくらしのペースや介護内容を個々に決められるので、自由度が高いといえるでしょう。
しかし、同じ建物のなかで暮らしている入居者同士が、自分の希望や都合だけを主張するのは難しいもの。それらを施設がすべて受け入れるのも、運営上は困難です。結果的には、一人ひとりの希望に配慮しつつ、全員に対して不便や不具合がでないように時間設定や順序が調整されます。

例えば、入浴の場合、共同で使用する浴室に対して同じ時間帯に入浴を希望する人が複数いれば、時間をずらす調整をしなければなりません。さらに、入浴を介助する介護職員の業務スケジュールや、決められた食事時間との兼ね合い、往診医による受診対応など、さまざまな事情を入居者全員の予定に応じて調整していく必要があるため、現実的には、入居者の自由度はある程度の範囲でしか叶えられないでしょう。

このように日々の施設運営のなかで個々の調整をするにあたって困難が生じた場合は、改善のための全体ルールが設けられます。すると、そのたびにルールが増えて、入居者の自由度は狭くなっていくのが現状です。
その結果、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅であっても、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームと同じように、全体がうまくいくように施設側の都合を優先して調整されたスケジュールや内容になっていくものです。

入居者の個別性や自由度をできる限り叶えながら、安心安全なくらしも支えるためには、個々が希望するサービスをその都度調整するのではなく、介護付有料老人ホームが行っている介護サービス(常時体制で、入居者全員に必要に応じた介護を行う)を、介護保険法に定められた基準以上の多くの職員配置によって提供することが、もっともスムーズな方法となるのです。

このことからも、月額利用料金が高く設定されている施設は、入居者の安心や安全を守りながら、一人一人の都合やペースを守れるように人員配置や設備を整えている結果が利用料に反映されています。さらに、入居者やご家族に対して細かなルールを設けて大きな負担を掛けることもありません。費用はかかるものの、入居者にとっては豊かで心地よいくらしを、ご家族にとっては安心を得られると考えられるでしょう。

※記事の内容は2023年3月末時点のものです