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石井佳苗さんと加藤孝司さんが
伝えてくれた、
リノベーションでつくる、自分らしい暮らしと住まいのこと。
<TOKYO リノベーション ミュージアム>
オープニングイベント

4月13日(土)にオープンした<TOKYO リノベーション ミュージアム>。「見て、学び、感じて、ひらめく」リノベーションをテーマにした館内には、10分の1のスケールでつくられたリノベーション事例の模型、75平米のリアルサイズモデルのリノベーション事例、コンサルティング・カウンター、タッチパネルで学べるリノベーションなど、実際に目や手で体感できる“リノベーションの知”がたくさんあります。

また、土曜日・日曜日にはリノベーションにまつわるゲストをお招きし、イベントも開催。「リノベーションに興味はあるけれど、何から始めたらいいのかわからない」人の好奇心を刺激する場も設けました。

今回は、オープン初日の4月13日(土)と翌日の4月14日(日)に開催された、ミュージアム内のモデルもスタイリングしていただいたインテリアスタイリストの石井佳苗さんと、ウェブマガジン『ensemble』(アンサンブル)の編集長も務める加藤孝司さんのトークイベントの模様を、お届けします。

まずは「シンプルな箱づくり」

会場となったミュージアムのラウンジは高い天井から陽が差し込む、開放感溢れる広々とした空間。その場所にご夫婦やお子さま連れなどさまざまな方々が集まり、事前予約制の会場は満席でした。

加藤さんの進行のもと、4月13日(土)・14日(日)両日とも、石井さんが実際にリノベーションした逗子のお家の工事途中の作業写真などを交えながら、お気に入りの空間づくりについて解説されていましたが、石井さんが一貫して提唱されていたのは、「シンプルな箱づくり」のこと。これは、「壁や天井がフラットであることで後々のインテリアが決まりやすくなり、楽しめる発想のこと」だそうです。

元々は、ごくありがちな中古マンションの部屋。
元々は、ごくありがちな中古マンションの部屋。

「逗子のお家は、1LDKの元々の間取りをほとんど変えずに、リノベーションしました。一般的なマンションにありがちなんですが、この家も梁(はり)や柱がでこぼこと出ていて、家具が置きづらい空間だったんです」(石井さん)

そんな空間を目の前にした石井さんは、思い切ってもとの壁の前面にさらに合板で壁をつくり、でこぼこのない空間をつくりました。

石井さんの手にかかると……
石井さんの手にかかると……

「もう一枚壁をつくったことで5センチ空間が狭くなりましたが、全く狭さは感じませんでした。むしろ、以前より広く感じます。そして合板の壁は強度が高いため、どこにでも釘が打つことができ、壁のインテリアもとても自由に楽しむことができます。『シンプルな箱』の出来上がりですね」(石井さん)


次に、石井さんは「初めの箱づくりにおいては、『光の行き渡らせ方』もとても重要」と語ります。マンションは構造上、一方向からしか採光ができないことが多く、部屋の間取りによっては真っ暗なお家になってしまうこともしばしば。事実、もともと備え付けてあった玄関からリビングへとつながるドアは、石井さんいわく「とてもクラシカルな板チョコドア」で、リビングからの自然光が遮られ、廊下から玄関が真っ暗だったそうです。

ガラスを入れたことで一気に奥行きのある広々とした空間に
ガラスを入れたことで一気に奥行きのある広々とした空間に

そこで、ドアをガラスの入ったものに変えて玄関まで光が届くように変更。ダイニングと浴室の間の壁は上部を開口しガラスブロックをはめて光を取り入れ、リビングと寝室の間の壁には大きな室内窓をつくったところ、「家全体がとても明るく生まれ変わった」とのことでした。

「素材の違い」を目だけではなく、足でも楽しむ

リノベーションを考える上で壁と同じく全体の大きな要素を占める「床」。石井さんの床のこだわりは、“部屋ごとに変わる素材”でした。

6畳ほどの寝室に貼られた床のフローリング材は、斜めに貼ることで、他の部屋とは違った雰囲気が演出されています。浴室の床は、ジオメタリックなタイルが貼られており、“壁のタイルとの色の組み合わせ”にこだわったそう。そして、ダイニングとリビングもそれぞれ異なる素材が貼られています。

寝室に貼られた斜めのフローリング。以前は和室だったそうです。
寝室に貼られた斜めのフローリング。以前は和室だったそうです。

「こういった床の素材の組み合わせを考えられるのは小さい空間の特権かつ、リノベーションの醍醐味でもあります。日頃からPinterestやInstagramなどで自分が好きだと思う画像をストックし、実際にこの逗子のお家でできることを選別して決めていきました」(石井さん)

ちなみに、部屋によって異なる床の素材は“目で見ること”が楽しめるだけではなく、部屋を行き来する際の“足の感触”も楽しむことができるそうです。

インテリアは「住みながら」
足していく

石井さんのお話は、土台となるリノベーションの話題から、「シンプルな箱」をライフスタイルに合わせて彩る「インテリア」の話題に移っていきました。石井さんが考えるインテリアは、家に住みながら足していくもの、だそうです。

右下の猫用トイレのカバーは、手作り
右下の猫用トイレのカバーは、手作り

“小さなお部屋”にしたかった洗面室

石井さんが「目指したのは、小さなお部屋だった」と説明する、洗面室。初めに、丸くころんとした洗面ボウルを選び、その後、使っていなかった丸テーブルの高さを少し調整して、洗面ボウルに乗せたそうです。
「専門業者さんにお願いしたのは、排水と給水をつけてもらうことだけです。あとは全て私がやりました」(石井さん)

壁には横にしたやや小さめな姿見鏡を、棚には寝室の余った床材をそれぞれ取り付け、ハシゴ型(ラダー)のタオルかけは、使用するタオルの横幅に合わせて、石井さんがDIYしました。

細い足のサヴォワ邸風テーブルは、シンクもついてて機能的
細い足のサヴォワ邸風テーブルは、シンクもついてて機能的

ほっとするキッチン空間

「キッチンのアイデアのもとになっているのが、20世紀を代表する建築家であるル・コルビュジエが手掛けた、フランスにあるサヴォワ邸なんです」。そう語る石井さんのキッチンのこだわりは、「最低限のもので生活」することです。

「収納がたくさんあると、かえって不必要なものを溜め込んでしまうんです」(石井さん)
そう考える石井さんのキッチン収納は、無駄がありません。ガス台の左側の隙間にすっぽり収まるキャスター付きの引き出しや、柱の出っ張りに合わせた箱型のゴミ箱は、石井さんのDIY。また、「自由な壁」のおかげで、気兼ねなく絵や写真、照明が飾れるため、機能的な空間になりがちなキッチンに“遊び”が生まれます。

「何時間も作業する空間だからこそ、ほっとする空間にしたいですよね」(石井さん)

洗面所にもあったラダーがここにも。
                            衣類を吊り下げてもおしゃれな収納アイテムです。
洗面所にもあったラダーがここにも。
衣類を吊り下げてもおしゃれな収納アイテムです。

自然光で目覚める寝室

石井さんがリノベーションを始めて1週間経った頃に台湾で出会った、茶藝館(ちゃげいかん)。この茶藝館で出会った折戸風の窓にインスピレーションを感じた石井さんは、帰国後すぐにアイデアを職人さんに相談し、大きな室内窓をつくりました。暖かな自然光を寝室にもたらしてくれる窓は、かわいいと評判だそうです。

この寝室でDIYされたインテリアは、壁に取り付けられた分厚い棚。息子さんの漫画を収納するために、作ったそうです。良い味を醸し出しているアメリカの古い板とエスニックなブラケットの組み合わせは、「エスニックなお店でかわいいと思って集めていたものを活用するときがやっと来た」(石井さん)。これも、DIYの醍醐味ですね。

キッチンの収納の少なさを食器棚でカバー。さらに収納をインテリアにしてしまうセンスに脱帽です。
キッチンの収納の少なさを食器棚でカバー。
さらに収納をインテリアにしてしまうセンスに脱帽です。

食器棚がつくるダイニング

存在感のある食器棚には食器だけではなく、本やグリーン、お気に入りの小物などが飾られており、“見せる収納”としての役目も果たしている、石井さんの自信作。参考画像を見ながら得た着想のヒントは、「雨戸」だったそうです。

「古道具屋さんに行って、たくさん並ぶ建具の中から、高さが150センチほどの自分のイメージに合う雨戸を2枚買いました。そして、その雨戸を背板にして、棚を作ったんです」(石井さん)

新しいものは空間に馴染むまで時間はかかるけれど、古いものは意外と違和感なく溶け込みますよね」。そう話した加藤さんの言う通り、食器棚の存在がダイニング全体に温かさを生んでいます。

模様替えを楽しむリビング

ラウンジチェアーと呼ばれる座面の低い椅子が、思い思いの場所に置かれたリビング。椅子には異なるラグやクッションが添えられており、模様替えの楽しさを演出しています。

このサイズのチェアーなら、持ち運びも楽ちん。
このサイズのチェアーなら、持ち運びも楽ちん。

「2〜3人掛けのソファは結構大きいので、壁を背にする必要があります。そうなると、全体的なインテリアの配置が決まってしまうんですよね。その点、ラウンジチェアーは一人でも動かしやすく、座面が低いため、空間が広々と見える効果もあります。自由な壁を生かしたインテリアが映えるのもうれしい点ですね」(石井さん)

猫との暮らし

石井さんが、インテリアスタイリングをする上でまず考えるのは、「どういう家族構成の人たちがどんなライフスタイルを送りたいのか」ということ。これを自分に置き換えると、「猫との生活が欠かせない」と語ります。

同居人である3匹の猫の暮らしやすさや、安全を守るのは、自分の役目であると語る石井さん。廊下に取り付けられている細いアイアンを並べた扉は、一番小さな猫の頭を計り、通り抜けられないように8センチ間隔で角パイプを並べています。リビングからの光を遮らず、明るい玄関にしている点も優れたアイデアの一つです。また、たとえ猫を飼っていなくても、外国風のアイアンフェンスのようで、すてきなインテリアとして楽しめます。

猫を“社員”と呼ぶ石井さん。社員たちの身体測定はとても楽しかったそう
猫を“社員”と呼ぶ石井さん。社員たちの身体測定はとても楽しかったそう
アーチの穴を開けただけではなく、
ちゃんと手作りドアもつけているという細かさ。最高です。

ダイニングと寝室の壁に、視線を落とすと小さなアーチ扉があるのに気がつきます。そこからスッと出てきたのは……猫! 猫用のトイレがバスルームと寝室にあり、猫専用の出入り口を作ったそうです。ペットのためにドアを開けておくと冷暖房の効きが悪くなるため、これはとても機能的。インテリアとしてのかわいさは、いうまでもありません。

家具の幸せは、
必要としてくれる人の所で使われること

「昔の良いものを受け継いだり、必要としている誰かに引き継いだりすることに“ほっこり”する」と石井さんは言います。

もともとあったリビングにつながる「クラシカルな板チョコドア」は寝室のドアに取り付けたり、古道具屋で見つけた「雨戸」を食器棚にリメイクしたり、持ってきたサイズの合わなかったダイニングテーブルは古道具屋さんに出したり……。

「家具は一生ものではないと私は考えています。好きなようにリメイクしたり買い替えたりするのも自由。使いにくいと思われながらあるよりも、必要としてくれる方の所で使われた方が家具も幸せだと思います」(石井さん)

リノベーションも、
小さなことから、こつこつと

いざリノベーションをしようと考えても、自由度が高くて尻込みしてしまう方も多いでしょう。しかし、今回石井さんにご紹介いただいたリノベーションは、間取りを変えずにお気に入りのインテリアで空間をデザインするというものでした。大掛かりにしなくても、「これならできる!」というアイデアがたくさんあったはずです。

今回石井さんが伝えてくれたリノベーションのアイデアや事例を生かして、まずは小さな部分でもかまわないので、ぜひ、リノベーションにチャレンジしてみてください。

実例写真:宮濱祐美子

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    TOKYO リノベーション ミュージアム

    TOKYOリノベーションミュージアムでは、建築家やインテリアコーディネイターを講師に迎えたセミナーや、リアルサイズでリノベーション後の空間を体験ができます。自分らしいリノベーションを探しにきてはいかがでしょうか。

    https://sumai.panasonic.jp/trm/