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2008年6月9日更新

「こんな暮らしがしたい!」あなたの夢や希望を実現するスタイルをご紹介します。

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交差点の角に建つ五角形・吹き抜けLDKの住まい

宮城県多賀城市の市道交差点の角に建つS邸。「く」の字形の変形敷地ながらも、学校や駅、ショッピングセンターに近く、通勤通学や買い物に便利な環境です。普通なら間取りに大幅な制約を受ける変形敷地を活用。天井高7mもある五角形のLDKを創り出し、外壁の半分近くに透過性のある素材を用いることで、道路からの視線を遮りながらも自由で明るい空間を確保。居ながらにして光の移ろいを感じられるおしゃれな住まいをご紹介します。

Point

  • 1.変形敷地を活かし、ローコストを可能にした建物 ?A交差点
  • 2.交差点を照らす行灯のようなたたずまい
  • 3.家事の動きを考えたキッチンはS邸の司令塔
  • 4.子育てをラクにする設備で快適さをプラス
  • 5.防犯性などを考え合わせたディテール

1.変形敷地を活かし、ローコストを可能にした建物

宮城県多賀城市は、奈良時代に国府・鎮守府が置かれた歴史の街ながら、最近はお隣の仙台市のベッドタウンとしても急速に成長しています。設計会社にお勤めのSさんは以前、首都圏に住んでいましたが、ご夫婦の実家に近い多賀城に家を持とうとUターンを計画。2年がかりで通勤やお子さんたちの将来の通学の便のよい用地を探していました。
S邸は交通量の多い市道交差点の角に建ち、駅、小中学校、ショッピングセンターに近い便利な立地です。その代わり敷地は、間取りがしにくい「く」の字形でした。しかも3面が歩道に面し、一方は横断歩道があるため、窓や戸を設けると通行人から家の中が見えてしまうことになります。自ら設計されたSさんは最初、南面からの採光を十分にするために、トップライトにするプランを考えましたが、開放感が得られないと断念。プランを何度も練り直した末、敷地いっぱいに五角形のホールをつくり、その周りをガラス繊維強化プラスチック(FRP)で囲むというアイデアを考えつきました。
建物は五角形の部分に家族の共有空間である玄関、LDKを配置。その奥にプライベートなバスルームと寝室を置きました。2階はワンフロアにし3人の子どもたちのための「ちびっ子スペース」としました。家族のライフスタイルを考えて、必要な空間は確保し、ベランダなどの我慢できるスペースは思い切って削ることで、コストを抑えつつ快適な暮らしができるプランになっています。

建物の3方を市道や歩道に囲まれた交差点の角に建つS邸。

五角形のホール部分の天井は、6本の梁が傘状に組まれている。


2.交差点を照らす行灯のようなたたずまい

LDKをぐるりと取り囲む壁面は、透過性のあるFRP、メッシュスクリーン、空気層、断熱材、耐候性をもつ高性能フィルムなどを8重に重ねています。Sさんはこの壁面を「ヤエビョウブ」と名付けています。
壁はメッシュスクリーンを挟んだことで、光を部分的に通しますが、家の中の様子が外からわかったり、逆に中から外の通行人の気配が感じられたりということはなく、落ち着いて過ごすことができます。壁は最高7mあり、上の方にはアクセントとしてフェイクグリーン(人造樹木)が入れられています。また、結露を予防するために部分的に乾燥剤を入れています。
ヤエビョウブの斜面は透過性のため南面のすべてと東西面の一部に、晴れた日には日の移ろいが感じられます。夕日で壁面がオレンジ色に染まっていく様は、日常の慌ただしさを一瞬でも忘れさせてくれます。
日の照り返しなどの影響で暑そうな気がしますが、実際は断熱性にも優れていて、夏はエアコン1台で十分。冬も温水ルームヒーター(昼間)とエアコン(夜間)を併用して、快適に過ごすことができたそうです。遮音性も期待以上で、外部の音はほとんど気になりません。断熱性、遮音性の効果は「ヤエビョウブ」だけでなく、デッキに面したガラス窓を3重(防犯複層ガラス)にした相乗効果だと考えられます。
夜は、照明を付けても外から中の様子はわからず、家全体が行灯のようにほんのりと明るく交差点を照らしています。

2階からLDKを見下ろす。FRPとメッシュスクリーンの透過性が和紙のようにやわらかい印象を与える。


3.家事の動きを考えたキッチンはS邸の司令塔

Sさんが設計する際に奥様が希望したのは、「キッチンにいながら家中を見渡せる、家族の様子がわかるようにしたい」というものです。LDKの一角に配置したアイランドキッチンから、リビング全体と、奥のフリースペースとベッドルームまで見渡せ、吹き抜けの上の子どもスペースの気配もわかるようになっています。あちこちと動き回る家事の動きをできるだけ短くするため、水まわり設備や収納も効率的に配置されています。
インテリア全体のデザインも統一して考えられ、LDKのカラーリングの基本は白、家具はナチュラルでなめらかな円形、キッチンはビビッドな赤で存在感を持たせています。さらに収納ボックスや、ドアの小窓などはスクエア(正方形)で統一。これを基本パターンとし随所にデザインを施しています。Sさんは「想像力を刺激するような部屋をコンセプトに、設計しました。イメージ通りに仕上がったと思います」と話されています。
LDKの吹き抜けを支える中央の柱には梁5本を放射状に渡しています。スクエアのデザインモチーフ、放射状の梁は共に吹き抜け全体にリズムと統一感をもたらしています。
LDKにはトイレが隣接してあります。お客様がいらした時にはフリースペースへのドアを閉めれば、パブリックスペースとしての機能が果たせるように設計されています。
2階の子どもスペースは、現在はワンフロアで一番上のお子さんの勉強机とベッドがあります。それ以外は自由に走り回れるように広々したスペースです。将来、3人のお子さんたちのスペースも作れるように、間仕切りできるような梁の配置になっています。いずれ2階でも身支度をするようになるだろうからと、小さなドレッシングも設置されています。

約50m²のLDKは、吹き抜けの開放感もあり広々とした空間。


4.子育てをラクにする設備で快適さをプラス

家電設備は、育ち盛りの3人のお子さんがいる5人家族ということから、快適で便利であるということを意識して、エコロジーを考え合わせて選び、エコキュートとIHクッキングヒーターを導入しています。
IHクッキングヒーターは、お手入れがラクで、いつもきれいにしておけることと、タイマーで料理ができることがメリットだと感じておられます。「火力がとても強くて、導入してよかったと思う設備です」と奥様。
ヒートポンプ式の洗濯乾燥機も、深夜電力の時間帯に洗濯・乾燥をすることで経済性が高いと評価。光熱費のランニングコストは、見積もっていたよりも安かったと感じておられます。
まだ幼い3人のお子さんたちと一緒のお風呂タイムは、奥様にとっては一仕事ですが、バスをファミリータイプの変形浴槽にして入浴しやすくしています。プッシュタイプの蛇口も奥様のリクエストだそうです。
室内の空気環境は、1階の下部に吸気口を2カ所設置、2階の上部に熱だまりを逃がすための小窓を2カ所設置しています。

2階のちびっ子スペース。今はひと続きの大空間として使用している。


5.防犯性などを考え合わせたディテール

安全面でも工夫されています。フリースペースと寝室の横にはウッドデッキが作られ、中庭の雰囲気になっています。歩道側には人目を遮るように木製の塀がありますが、万が一のことを考えて、窓は透明で侵入に強い防犯ガラスを使用。それ以外の窓ははめごろしにしています。玄関ロックも複数にするなど、数々の工夫で安全性を高めています。
S邸の立地は、もともとお子さんたちが中学や高校などへ通学するようになった時に、暗い道を通らずに登下校できるようにと選んだ土地です。家族の現在と未来のライフスタイルをイメージし、自分たちにフィットする住まいを実現しているのです。

ウッドデッキには、イロハモミジが植えられている。開口部は3重ガラスで、2階への足がかりを設けないなど、防犯にも配慮。


■建築概要

所 在 地

宮城県多賀城市

設計・監理

佐伯裕武
(東畑建築事務所
東北支所)

構造設計

ミツイマサト

施   工

片倉工務店

構   造

木造+鉄骨造(一部)
/地上2階建て

敷地面積

174.70m²

建築面積

80.32m²

延床面積

124.21m²

竣   工

2007年3月

工   期

170日

工 事 費

約1,900万円(税別)

●主な外装仕上げ

屋根:
ガルバリウム鋼鈑立平葺き(雪止め付き)
外壁:
FRP+高性能フィルム、ガルバリウム鋼鈑

●主な内装仕上げ

壁:
メッシュスクリーン+FRP、PB12.5+機能壁紙
床:
高弾性・衝撃吸収シート
天井:
格子天井、PB12.5+機能壁紙