くらしネクスト

「心地よいくらし」を考える

野口弘子

初代ハイアット
リージェンシー
箱根リゾート&スパ 総支配人
野口弘子

若山嘉代子

グラフィック/エディトリアル
デザイナー
若山嘉代子

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川島蓉子

ifs未来研究所所長 川島蓉子

今回、「くらしネクスト会議」にお迎えしたのは初代ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ 総支配人の野口弘子さんと、エディトリアルデザイナーの若山嘉代子さん。お二人と長い親交があり、「ちょっと先の未来」について企業やクリエイターと一緒に考える活動を続けているifs未来研究所 所長の川島蓉子さんが案内役となり、「ホテル」と「家」に思いを行き来させながら、くらしの中の心地よさについて話し合いました。

“棲み家”をコンセプトにしたホテルの、
家とは異なる“くつろぎ”の演出法

ホテルの中心に位置し、16:00~19:00は宿泊ゲストにシャンパンなどの飲み物をフリーフローで提供している。宿泊する人にとってのリビングルームをイメージしているため、この時間はチャージなど普段家にはない行為をさせないことにこだわっている。

ハイアットリージェンシー箱根は“棲み家”をテーマにしたホテル。まるで家に居るかのような心地よい空間づくりにこだわっています。「空間はもちろんですが、家事などの日頃の煩わしさから解放してあげつつも一切日常を切り離すのではなく、ぬくもりが感じられるようなスタッフの佇まいや関わり方を意識しています」とは野口さん。ホテルである以上、万人に受け入れてもらえる設えやサービスが基本ではありますが、“パーソナライズ”が根底のキーワードにもなっています。宿泊者の多くは、50~60代のご夫婦。決して安くはないお値段ですが、「別荘を買うくらいなら毎週ハイアットに来たい」という声もあると言います。

お料理やお掃除など、手間のかかる家事はプロに委ね、自分たち二人の時間をゆったりと存分に楽しめる場所になっているようです。「ご夫婦にとって居心地のいい場所を求めてここにいらっしゃいます。肩肘張らず自然体で楽しまれているからか、若々しくてとってもおしゃれなんです」と野口さん。心地よさのポイントは、「目に触れるものと触れないものの吟味」だと言います。ダイニングには店名はなく派手な看板も掲げられていません。あくまでも家の延長として考えているからです。客室の少し重たい印象のオーディオや必要以上の茶器は見え過ぎないよう格子戸付きのチェストに仕舞われ、スパで使用するアメニティや美容機器はすべてキャビネットに収め、一切お客さまの目に触れることはありません。
ハイアットリージェンシーが、贅沢な空気感を味わいながらも家に居るかのような寛ぎに浸れる場所となる所以はその辺りにあるのでしょう。

洋食と和食があり、双方オープンキッチンで作る人と食べる人の絶妙な距離感が考えられている。普段とは違う空間ながら、リラックスできることを優先しているため、浴衣や丹前で来店しても構わない。

心地よさキープの秘訣は、
自分目線のモノ選びと
定期的にお願いするお掃除サービス

野口さんのご自宅はホテルにほど近い箱根の中にある一軒家。「インテリアなどを選ぶ時は人目は気にしません。モノ選びはあくまでも自分目線。ただ、普段使いなのか、人を招いた時に使うかなど、シチュエーションはきちんと考えます」と野口さん。多い時には30人集まって庭でバーベキューをするため、来客用の椅子はかなり必要、置いてカッコイイことはもちろんですが、普段は隠せるようスタッキングできる機能性は外せません。またテーブルコーディネートなど設えのアレンジは気分が上がるポイントです。「私自身の楽しみでもあり、人に一目置かれる見せ場でもありますから、褒めていただくと正直とても嬉しいです(笑)。最近は、モノそのものへのこだわりから、人との関わりなどコトに関心がうつっている気がします」と野口さん。人を招いて楽しい時間を過ごすにも、疲れて帰った時に心から寛ぐ時間を持つためにも庭のお手入れや部屋の掃除は欠かせません。でも多忙ゆえ、なかなかその時間が持てないのも事実。その時には割り切って外部のサービスにお願いするとか。住まいの心地よさをキープする方法はとっても大きなテーマになっているそうです。

見ていたいものは
自分の暮らしに
ちゃんと関わっていけるもの、
邪魔に感じないもの

都内のコーポラティブハウスにお住まいの若山さんのこだわりは、室内で目に触れるものはこれからの自分の暮らしに関わっていけるものだけに絞ること。見せたいものはリビングでと決めています。年を重ねて最近は「和」にまつわるものに特に関心が向いていることもあり、今は風炉釜とお棗などの茶道具と三味線がその代表。始めたばかりの三味線にはすっかりはまり、その時間を捻出するため日頃から掃除やアイロンがけなどちょっと手間のかかる家事は人に頼んでいるという若山さん、「贅沢に思われるかもしれませんが、その時間こそが今の私にとってなくてならない大切な時間なのです」と。目に入れたくないものを最も意識する空間は、お風呂だとか。「リフォームの際、シャンプー類など使用グッズは持ち運ぶことに決めました。置き場所としてラバトリー(洗面スペース)に小さな棚をつくり、普段は目に触れないよう工夫しています」と若山さん。ホテルに来てバスタイムが特に気持ちいいのは、生活の細々したものが置かれていないことにあると日頃から感じていたことを自宅で実現されたようです。

ハイアットリージェンシー
箱根リゾート&スパの
心地よいポイント

客室は明るく、軽いイメージにリフォームするため家具やカーペット、カーテンなどは一新したが、机など以前から使用しているものも混ざっている。リフォームした雰囲気と馴染んでいるのは、リペイントを施しているからだ。

バスルーム。ガラス張りで広さを感じる。ほとんどモノを置いていないため生活感がない。

サンテラスにあるチェスト。冷蔵庫などは格子戸の中に収まっている。

和室にも、サンテラスが付いており、開放感がある。家具は箱根を意識し和モダンに。チェストの中にオーディオやグッズが仕舞われている。

チェストは軽さのある空気感を大切にするため格子戸に。中身が見えるようで見えない。

スパの扉を開けると、部屋全体が飴色と白で統一され、照明はほぼダウンライト、美容機器類が目に入らないので、気分がとても落ち着く。

美容機器、アメニティ、タオルなどはすべてキャビネットの中に。空間のすっきりとした美しさをキープすることで非日常の贅沢感が味わえる演出につながっている。

「くらしネクスト会議」
参加メンバー

野口弘子

ゲスト

初代ハイアットリージェンシー
箱根リゾート&スパ 総支配人
野口弘子

ホテルマーケティング、コンサルティングを経て、2002年ハイアット入社。パークハイアット東京にてマーケティング支配人、ハイアットリージェンシー箱根リゾート&スパでは開業より総支配人としてホテルを成功に導き、2017年9月ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄の総支配人に就任。

若山嘉代子

ゲスト

グラフィック/エディトリアルデザイナー
有限会社レスパース代表
若山嘉代子

武蔵野美術大学出身。主に書籍や雑誌など出版物の企画編集+デザインを手がける。特にインテリアやフード分野に強みを持ち、有元葉子氏ら著名な料理研究家の著作も多数手がける。

川島蓉子

案内役

ifs未来研究所所長
川島蓉子

伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。
著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。