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"子ども目線"で考える、子どもが賢く育つ住まいづくり

2007年5月更新

大人にとって快適な空間が、必ずしも子どもにも安全で快適とは限りません。大人と子どもでは、身長や体力、危険を認識して正しい選択ができる認知・判断力などが異なります。子どもとの暮らしを、より安全で快適なものにするために欠かせないのが、“子ども目線”です。子ども自身が住まいの中で、暮らしを通じて危険を学んでいくなど、子ども目線を考慮した住まいづくりの工夫をご紹介します。リフォーム時も、設備を選ぶ際にいっしょに考えましょう。

1幼児や児童にも、誰にでも使いやすいユニバーサルデザイン

誰もが安全に使用できるよう、設計されたユニバーサルデザイン(UD)。高齢者や身体の不自由な方むけのように思われますが、幼児や児童、妊娠中の方など、誰にでも安全に使えるようにデザインされたものがUDです。生活環境や、家族の年齢、行動パターンを考慮した上で、UDを最大限に採用した住まいづくりを考えることが子どもにとっても大切になります。

視線を下げ、子どものつもりで 視野、体格、力の差によって生じる危険を除く

住まいの中でも、玄関や部屋のドアの下などにわずかな段差がある場合、つまずきの原因になります。大人には平気な段差が、小さな子どもには大きな段差になりえます。あかりをON/OFFするスイッチなどでも、押す力の弱い子どもには、操作が難しい場合があります。
大人には普通に見えているものが、背の低い子どもには見えない場合があります。見えない死角が原因でケガをすることもあります。
住まいの中で“障害”となる部分はどこなのか、子どもの目線まで下げてもう一度、住まいの空間を点検してみましょう。実際に子どもの気持ちになって使ってみたり、子どもが使うのを観察しながら、危険を取り除きたいものです。

大人と子どもで生じるさまざまな差は、“子ども目線”でチェックを。

抜けやすいマグネット式でコードへのつまづきを防いだり、ON/OFFを小さな力で操作しやすいスイッチも。

頭が大きく、小さな子どもに段差は大敵。 UD発想で転倒の危険を取り除きたい

乳幼児などの小さな子どもの場合は、頭が大きく体のバランスが不安定なため、段差だけではなく、平らな床の上でも転びやすいという傾向があります。しかも顔や頭からの転倒が多いために大ケガにつながる可能性があります。
足元の段差をなくすだけでなく、UDは誰もが安全・安心して使用できるようにデザインされているのが特徴です。UDの視点からも、もう一度住まいの空間を見直したいものです。

UD視点のアームレスト付きトイレ。便器へ落ち込む事故を防ぐなど、トイレデビューにも役立つ。

■家庭内外で起こる不慮の事故の割合

乳幼児の家庭内事故は「男の子」の方が危険!?

厚生省の「人口動態統計」によると、乳幼児(0〜4歳)では家庭内での不慮の事故死(414人)は、交通事故死(170人)より大きく上回っています。特に4歳以下の事故が全体の約40%を占めています。
家庭内事故全体の割合では、男性48%、女性52%と大差はないものの、0〜4歳では57%、5〜9歳では60%が男の子。女の子に比べて活発な子が多いためと言われています。
安全を確保するのはもちろんのこと、危険を教えて学ばせたり、注意を払える子どもに育てたいものです。

2子どもの目線で住まいの危険をチェック

大人と子どもでは、見える景色が違います。ケガや事故が起きてから「これが危険だった」と原因に気付くことも少なくありません。そんな危険を避けるには、“子ども目線”での住まいづくりが欠かせません。

ママやパパが使う「水まわり」は興味津々

大人が使うものに子どもたちは興味津々です。水と火を使うキッチンをはじめ、バスルーム、トイレなどは、危険が多い場所です。
便利な給湯設備も子どもにとっては危険な場合もあります。レバーを上下させるだけで水が出るタイプの水栓では、誤って熱湯を浴びることのないように、専用のストッパーを使うのもおすすめです。また、常にストッパーをしていると支障がある場合には、使わないときには給湯スイッチを切っておくなどの配慮で安全を確保します。
お皿を並べたり、食事作りのお手伝いが可能なお子さんなら、お手伝いの中で、火を使うときなどの気をつける点を教えていくことも大切です。

安全を確保した上で、お手伝いを通じて、正しい設備の使い方や危険を学ばせましょう。

使いやすい姿勢で安全を保ち、水栓に楽に手が届く踏み台つきの洗面化粧台。

危険と安全を見極める能力を養う「リビング」

リビングは、大きな意味で「ゆるい空間」にしましょう。子どもが乳幼児の時には、周りのあらゆる危険から大人が保護する必要があります。タバコ、ライターなども子どもの手の届かない場所に置くなどして、子どもの行動範囲にはなるべく物を置かないことが大切です。
その後、成長とともに多少、空間に遊び心を持たせ、自由に遊ばせながら、子ども自身が危険と安全を見極められる能力を養うようにしたいものです。家の中で一番過ごす時間が長いリビングは子どもの教育の場として、年齢や状況にあわせて自在にレイアウトを変えられる「ゆるい空間」にしておきましょう。

大人よりも床などの低い位置で過ごすことの多い乳幼児。床材などの建材も低VOCなどを選びたい。

行動を予測した空間づくりで使いやすさの確保を

子どもはかくれんぼが大好き。クローゼットなどの収納スペースを見つけると入ってみたくなるものです。そこで、子どもが入る、何か物を出そうとするといった行動を予測し、ウォークインクローゼットなどでは、しまう置き場所を工夫します。
例えば、自分のことは自分でできるように、年齢に応じた住まいの工夫が大切です。トイレデビューや歯磨き、着替えなど、徐々に自分でできることが増えていきます。
着替えができるようになったら、自分で洋服のコーディネイトをしてもらうのもいいでしょう。その場合は、子ども専用の収納を手の届きやすい位置に設け、収納扉の取っ手も操作しやすいよう低い位置まで伸ばします。

子どもの成長に合わせて出し入れがしやすく、収納棚もアレンジ可能なシステム収納。

低い位置には思わぬ危険も。とんがりをなくした幅木でより安全に。

事故発生の約40%が「居間(リビング)」

国民生活センターの「家庭内事故調査」によると、事故発生場所で最も多いのが「居間(リビング)」の36%。次いで台所(キッチン)23%、階段13%、浴槽・風呂場(バスルーム)8%の順に。事故のタイプはグラフにありますが、住まいづくりの中で、建材や設備の選び方で防ぐことができるものも多数あります。子ども目線の住まいづくりで安全・安心な住まいを実現したいものです。

■事故タイプ別発生件数

3住まいは創造性を養う大きなジャングルジム

子どもは遊びの天才。住まいの中にある、あらゆるもので自分なりの遊びを考えます。大きな事故は避けなければなりませんが、子どもに自分で考えて行動するという“大人力”をつけさせるためにも、安全な冒険地帯を提供しましょう。

安全を確保した上での登り木のあるロフトや屋根裏

子どもは高いところに上るのが大好きです。ロフトがある場合、寝起きをするといった日常使いをするには転落などの危険がありますが、収納として使用する場合、ロフトに上って秘密基地を作るといった子どもならではの冒険地帯になります。
常に親の目の届く場所ではないので、危険な物は置かない、物が落ちてくる環境は作らない、床への転落に配慮することを基本に、子ども専用の秘密基地をつくるのもいいアイデアです。

落下を防ぐ柵の活用で安全を確保。

危険な場所は隠さずに危険を学ばせたい

見た目はおしゃれで優雅ならせん階段。上の階に上る手段がらせん階段だけという住まいは、子どもだけでなく、大人にも危険です。家庭内の事故発生場所でも階段は上位に上っています。
小さなお子さんがいる場合、落下を防ぐ防護ネットなどを使うのをよく見かけます。それと同時に、らせん階段などは、この階段はどうしたら危険なのか、どこが危険なのかということを子どもに教育する必要があります。
危険な場所や物を、覆い隠すのではなく、危険な物を危険だと気づかせる、気づきの力や認知力を高めるようにします。そして危険ではない使い方を自己学習させて、選択する力や判断力を養うようにしましょう。危険な物をすべて排除するのではなく、年齢に応じた認知力や判断力を養えるようしたいものです。

子どもでも操作可能なスライドタイプのはしご。触れて、使いこなさせることも大切。

4留守番時の子どもを安全に守る

子どもは大人が思いつかないような行動をとる場合があります。「子どもにケガはつきもの」と言えるくらいの大らかな気持ちは必要ですが、取り返しのつかない大事故は避けなければなりません。
そんな時、まず子どもが危険に遭遇しない工夫をします。それでも冒険者の子どもは危険に遭遇することも。そのための次の工夫として、事故にあった時には、ケガを最小限に抑える配慮(被害を低減する工夫)をしておきましょう

指を挟みやすいドアや窓にクッション性を持たせる

大人にとって握りやすい高さのドアノブは、子どもにとっては目の高さだったりと危険なものです。また、ドアや窓で手を挟むという経験は、大人になっても多くの方に経験があると思います。勢いよく閉じられたドアや窓に指などを挟んでしまったら、大事故につながりかねません。
開き戸よりも引き戸でゆっくり閉まるドアにすると、手指を挟みにくくなります。また、手指を挟みそうな開き戸や引き戸の端は、クッション性のあるものにして、万が一手を挟んだ場合にも衝撃を小さくするようにしましょう。また、引き戸などの跳ね返りを小さくする、ブレーキキャッチャー材などもあります。

トビラと枠の隙間をなくすことで、指挟みなどを防止。

衝撃を吸収する床材で安全と騒音対策も

体型が不安定な小さな子どもは、よく転倒します。その時にケガを防ぐためには、床や壁にも衝撃を吸収するような素材を使うことで、転んだ時のケガが最小限ですみます。また、衝撃を吸収する素材は防音効果も高く、マンションや戸建ての2階などの場合、階下への騒音対策にもなります。子どもは跳んだり跳ねたりが大好きです。伸び伸び育てる住まいの工夫を考えましょう。
基本となる部分がきちんと設計されていれば、家庭内で大きなケガをすることはなくなります。床やドア、内装などの建材も、間取りと同様に安全面からもきちんと選びましょう。

つまづきの元になるレールをなくした引き戸も。引き戸タイプなら、低い位置からの操作でも開け閉めがしやすい。

外出先からも子どもの様子を確認できるシステムも

小さな子どもを一人で留守番させないことは重要ですが、仕事や買い物などで、どうしても住まいの中で一人にさせてしまう場合もあります。
ほんの少しの時間でも、子どもだけを家に残すのは心配なものです。そこで、外出先からも子どもの状態を確認することができる、セキュリティシステムもあります。
子どものいる部屋に設置したモニターカメラが捉えた画像を、外出先から携帯電話を通じて確認できるものです。また、防犯以外の目的でも、目の行き届かない部屋にいる子どもが一人で何をしているのか確認することもできます。常に目が行き届きやすいシステムなども活用して安全を確保したいものです。
セキュリティシステムは、子どもを監視するものではなく、愛情を持って見守るためのものです。機械は使う人の心構えでさまざまな様相を呈します。

家事をしながらも子どもの様子を確認できるシステムで、より安心・安全に。

内容監修:田中賢氏(日本福祉大学情報社会科学部生活環境情報学科助教授)