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家族もペットも共に喜べる住まい

2012年8月29日更新

家族の一員としての、犬や猫などペットの存在がますます高まっています。室内で一緒に暮らす例も増え、ペットとの“同居の知恵”が住環境にも必要になってきました。動物のベーシックな行動やしつけの視点も取り入れた、人とペットが快適に暮らせる環境をリフォームで実現しましょう。

1今の住まいで家族もペットも本当に快適なの?

ペットと一緒に暮らす人が増える中、ペットとのトラブルに悩んでいる人も少なくはありません。人にとって快適な住まいは、ペットにとっても快適な住まいのはず。今の住まいには、いったいどんな問題があるのでしょうか?
室内で飼うペットは、犬、猫のほかに、ハムスター、フェレット、ウサギなど種類も多くなっているのですが、ここでは多数派の犬、猫を中心に話を進めていきます。

ペットの存在はもはや“家族の一員”に

人の暮らしに深く関わるようになったペット。かつての番犬のような存在ではなく、「かわいい」「一緒にいると安らぐ」というような心の友としての役割が高まり、世代を問わずペットを飼う人が増えています。
動物愛護に関する調査でも、一戸建ての住宅で約40%の家庭で犬や猫等のペットを飼っています。マンションなどの集合住宅でも約19%の家庭でペットを飼っています。特に集合住宅ではペットの飼育ができることを「売り」にしている物件も多く見られ、ペットを飼いやすい環境が増えています。

■ペット飼育の有無

(出典:内閣府『動物愛護に関する世論調査 2010』より)

■住まい別ペットを飼っている割合

土足文化の欧米等とは違う日本の住宅事情

家の中で靴を脱がない生活習慣のある欧米では、もともとペットは家の中で一緒に暮らすケースがほとんどです。一方、日本では、靴を脱ぎ、畳で暮らすライフスタイルが主流だったため、動物は家の中には入れない暮らしが続いていました(猫はその中で例外的な存在でした)。
住宅の造りも、夏の高温多湿を反映して、間仕切り・窓などが多く、風通しに気を遣っていたため、室内の空気の汚れが問題になることは少なかったと言えます。ところが、高気密・高断熱の住宅が増えてくると、室内の空気の汚れが問題になります。ペットは、細かい毛や外の汚れを持ち込む原因として、同時に空気の汚れを受ける“被害者”として、室内で飼う場合に注意を払う必要が出てきたのです。

2ペットの行動スタイルを知ってより良い関係に

気になるペットの無駄吠えや落ち着きのない行動などには、何らかの原因があります。そこで、ペットの行動スタイルから快適な住環境をご紹介します。

猫はやたらと高いところには登りたくない!?

犬や猫に限らず動物はケンカが嫌いです。ケンカをしないために、順位づけ(ポジショニング)の行動をとっています。
家の中で猫が高いところに上る行動は、邪魔されずに周囲の様子を見回すことのできる、安全な場所をさがしているからです。ただ単に高いところが好きというわけではないのです。多頭飼いになればなるほどポジショニングのため、上へと上っていきます。そのため、多頭飼いの場合は、あらかじめ居場所を頭数分確保しておくことが大切です。
猫は室内で飼われるようになって、運動機能が低下しています。上るのは垂直でもかまいませんが、降りるためにはスロープや段差も必要です。

室内で飼われているペットは運動能力が低下しています。
上る部分には、安全に降りるための段差も必要です。

見通しの良い室内はストレスの原因!?

ペットのためによかれと、部屋全体を見渡せる位置等にペット専用の特別スペースをとっていませんか。
実は、室内猫の場合、部屋の全部を見渡せることは、退屈から逆にストレス行動につながりやすくなります。猫はもともと好奇心が強く、空間がたくさんあり、回り込まないとどうなっているのかがわからないほうが楽しいのです。そういうものがないと逆にストレスを感じてしまいます。ストレス軽減のためにも空間を区切って見えない部分をつくることが必要です。

犬にとっても見え過ぎは禁物

見える範囲が犬にとってのテリトリー(領域)となり、吠える対象になります。バルコニーなどの見晴らしの良い場所では、玄関先や道路などの遠くまで見えてしまい、来客者のみならず、時には、家の前を通り過ぎる人にまで吠えて、吠える行動の助長につながります。近隣への騒音問題などから、吠えるのを避けるためにも、吠えなくていいところは見えなくして、テリトリーを明確にすることが大切です。

犬はリーダーがいないと不安です

犬は人よりも秩序や順位、規律を厳しく守る動物です。それを明確にしていないと、犬にとってはとてもストレスに感じてしまいます。群れで生きる動物なので、それを統率するリーダーが欲しいのです。ところが人が犬のことを擬人化して、子どものように扱い人より優先してしまうと、犬にとっては誰がリーダーなのかがわからずに混乱してしまう要因に。例えば来客者に対する、無駄吠えや落ち着かない行動は、大半が警戒からくる行動です。リーダーがいれば、リーダーの行動を見て判断できるので、来客者が不審者かどうか犬にも分かるのです。

家族にリーダーがいないと、不安になってしまい、無駄吠えの行動に。

「ダメ」と叱るシーンを減らすのがコツ

家族とペットが安心して一緒に暮らすのに欠かせないのがルールです。
室内犬に入って欲しくない部屋や場所は、入らせないように家族全員で同じようにペットに示すことが必要です。例えば和室や寝室に入らせないようにする場合は、「入口に段差のあるところには入ってはいけない」というような見た目にも単純なルールを作り、教えること。また、階段などは足腰への負担も大きいので上り下りしないようにルールを決めておくとよいでしょう。触って欲しくないものは、テーブルの上や目につきやすいところには出しておかないのは鉄則です。「ダメ」と言われることが多いと、人と同様、犬だって萎縮してしまいます。ダメな理由が分からないとなおさらです。叱ったり叱らなかったり、家族の対応が異なるルールでは犬が混乱します。家族全員が同じルールを守らせることで、何をしたらダメなのかを教えることが大切なのです。

家族全員でルールを統一して、ペットに教えることが大切です。

衛生上からも寝室には入れないようにする

犬や猫の母性本能から、人間の赤ちゃんを自分の子どものように扱うことがあります。守ろうとして口にくわえて安全な場所に連れて行こうと、逆に赤ちゃんに怪我をさせてしまう可能性があります。赤ちゃんは大人の目が届く範囲に寝かせておくと安全です。
寝室は室温が一定していて雑菌が繁殖しやすいので、衛生上の問題からも、ペットは入れないようにするとよいでしょう。
犬の寝室やベッドを人と一緒にすると、犬の依存性が強くなってしつけのしにくい状態にしてしまう等があります。最低でもベッドは別にしましょう。

ペットを危険な場所には近づけない

[バスルーム]
薬物がたくさんある場所。お皿の水を飲まない猫も水溜りはなめてしまうので危険です。水を張ったままのバスタブに落ちてしまうことも。

[キッチン]
薬物と、食べてはいけない物がいっぱいある場所。生ごみや刃物は収納し、中身の入った鍋は置いたままにしない。犬の場合はお互いの存在が確認しやすいように、対面式やオープンキッチンがおすすめ。猫の場合は、カウンター等に上ってしまうので、独立型がおすすめです。犬、猫ともに危険を避けるためにもなるべくキッチンには入らせない方がよいでしょう。

[トイレ]
溜まっている水を飲もうとして危険なため、便座のふたは必ず閉めておく。

[バルコニー]
バルコニーでは、飛んでいる鳥を追って手すりに乗り、そのまま落ちてしまう猫も少なくありません。バルコニーには出入りできないように、柵をつけるなどの工夫が必要です。

外出先から携帯電話で、留守中のペットの様子を確認することのできるシステムもあります。

3しつけのしやすい住まいをつくるポイント

ペットとの快適な住まいの実現には、家族にもペットにも欠かせないのが、お互いのルールを守ることです。きちんとしつけることで、より快適な住まいへと近づきます。

欠かせない2時間おきの通風と湿度調節

散歩中に他の犬に出会った時にじっと伏せる犬がいます。これは順位を見極め(ポジショニング)、相手よりも視線を下げる行動です。
ダイニングを座卓や掘りこたつなどにすると、人が犬と同じ目線か、犬が人を見下ろす状態になってしまいます。それでは犬にとってはポジショニングがわからなくなってしまう上、食卓に近づくことで、ご飯が見えてしまいます。
犬は本能として群れで取ってきた食事はみんなで分配して食べるのが基本です。飼い主が食べた後に分けてもらうことが犬にとって当然のことだと思ってしまうのです。しかし、栄養学的に、人と犬が同じものを食べるのは好ましくありません。人の食事が目の前にあるのは、無駄な誘惑を増やし、我慢を強いるという辛いことです。テーブルは、ポジショニングの問題からも犬の目線から見えない高さにし、見せない、乗らせないようにするとよいでしょう。

食事をするテーブルは、犬の目線から見えない高さにしましょう。

居場所を決めることで安心するペット

家族にそれぞれの部屋があるように、ペットにも居場所は必要です。ある猫が、和室の襖を上ってボロボロにしたということがありました。この行動には何らかのSOSが隠されている可能性があります。この猫の場合、居場所(寝床/安心できる場所)を求めて和室に入ろうとしていたのです。高すぎず、見えすぎない、区切られたスペースに居場所を確保すると猫も安心します。
犬は家族の集まる場所が把握できる所で、かつ、静かな場所に居場所を決めると安心します。居場所は柵などで囲い、その中には、体がすっぽり入る大きさのハウスをつくると落ち着きます。居場所は一度決めたら移動しないこともポイントです。環境を急に変えてしまうとストレスのもとになります。

■犬の居場所のつくり方

家族の集まる場所に居場所を決め、入ってはいけない場所と、自由に入れる場所をきっちりと決めることがポイントです。

ハウスは、屋根つきで体がすっぽり入るサイズが安心しやすい。。

おしっこ汚れ対策はトレーニングで解決

ペットがそそうでフローリングを汚してしまうのは、トイレの位置が分かっていないだけです。
おしっこトレーニングは失敗しないように、ステップを踏んで、怒らずにじっくりと最初に覚えさせることが大切です。

まず、犬が寝床を汚すのを嫌う性質を利用し、
(1)小型犬の場合は1畳くらいのスペース、大型犬の場合は1部屋(4〜6畳程度)のスペースを居場所として制限します。
(2)ハウス以外の全面にトイレシーツを敷きます。シーツの上はおしっこをしてもいい場所です。
(3)おしっこをする時に、シーシー、ワンツー・ワンツーとコマンド(合図の言葉)で促します。
(4)そこでできたらほめます。
(5)次に、ハウスから遠く離れた場所でするように覚えさせます。
(6)ハウスに近い場所から床が見えるようにシーツをはがします。
(7)そうやってシーツをだんだんはがして、最終的にはトイレの部分だけにシーツを残せばトレーニングは終了です。

■おしっこトレーニングの手順

居場所のスペース全面にトイレシーツを敷く。

できるだけハウスから離れた場所でするように、徐々にトイレシーツをはがしていく。

最終的にはトイレスペースだけにトイレシーツを敷けばよい。

“誘惑物”になる物は見せない工夫を

ペットの見える位置には、物を置かないのが安全です。飼い主が触っていたものや臭いのするものはペットにとって“誘惑物”です。収納スペースにしまう、もしくは、手の届かないところや見えないところに置くようにしましょう。収納は、簡単に開けられないような形状の扉やノブのものにすることが大切です。
コンセントの場合、ペットの手の届かない位置につけようとして腰の高さ等の高い位置につけるのは、場所によってはコードがぶら下がる状態になり逆に危険です。キッチンならカウンターの高さ、リビング等なら電気製品を置く場所に合わせてコンセント位置を取るとよいでしょう。

ペットの届く位置には物を置かずに、見えないように収納しましょう。

4人もペットものびのびする快適な設備とは?

人とペットが住まいで一緒に暮らす中で、気になる汚れやキズなど、快適な住まいに欠かせない設備をご紹介します。

共に快適に暮らすためのポイントは「換気」

換気がきちんとされていない中でペットを飼うと、様々な問題が発生しやすくなります。例えば、歩きまわるペットの体からアレルゲンの要因になるタンパク質が部屋の中にたくさん落ちます。湿気のこもった住宅やカビの生えやすい環境の住宅では、雑菌などが繁殖しやすくなり、シックハウスやアレルギーの原因にもなりかねません。「換気」はペットと室内で健康的に暮らすための重要なポイントの一つなのです。

欠かせない2時間おきの通風と湿度調節

きれいな空気の中で暮らすためにも、ペットとの生活は最低でも2時間に1回は窓を開けて空気を入れ替えたいものです。
換気設備には、新築住宅に義務付けられている24時間換気システムなどの機械換気設備がありますが、これにはさらに排気式と吸・排気式の2種類があります。排気式は室内を乾燥させやすく、静電気でホコリやアレルゲンを壁に定着させてしまう上、人もペットも呼吸器系疾患を起こしやすくなります。湿度調整のできる建材などを併用して乾燥を緩和するとよいでしょう。湿度は50〜60%が望ましく、70〜80%以上になると逆に湿気でほこりを定着させやすいので注意が必要です。

珪藻土や調湿系のクロスは、部屋の湿度を調整してくれます。湿度によっても、アレルゲンや汚れが付着しにくくなります。

壁は、腰壁タイプ+珪藻土がおすすめ

猫は体を舐めるという性質が強いので、犬よりもたくさんの唾液を体になすり付けています。その体で部屋の中を動き回ると、アレルゲンが壁や柱等に付着してしまいます。アレルゲンを除去するためにも拭き掃除のしやすい壁や、汚れが付着しにくく静電気の起こりにくい壁などを選ぶとよいでしょう。
理想は壁面の下方部分を水拭きやリフォームしやすい腰壁タイプにして、その上は珪藻土や調湿系のクロスにすることです。そうすると、メンテナンス面のみならず、部屋内の湿度を調整することで部屋の汚れやアレルゲンを防ぐことも期待できます。
また、壁面だけではなく、天井材にも調湿できる建材があります。天井・壁面と合わせて使うとよいでしょう。

ペットの体が触れる壁には、腰壁を使うと掃除やリフォームがしやすくなります。

防音・遮音仕様で鳴き声のトラブルを未然に防ぐ

かわいいペットの鳴き声も、時には家族や近隣への騒音になってしまいます。近隣とのトラブルになる前に着目したいのが、防音・遮音効果のある建材です。ペットの鳴き声や生活音等を抑える遮音性の高い下地パネルや防音シートを天井・壁・床に使うとよいでしょう。
また、見落としがちで気をつけたいのが、「換気扇」などからの音漏れです。ペットの鳴き声などで、近隣の迷惑にならないためにも換気扇用の防音カバーなどをつけて騒音対策を立てておきたいものです。

■防音・遮音効果で未然に音のトラブルを防ぐ「防音建材」

窓のサッシや換気まわりよりも、防音対策が必要です。

パーツ別やリフォームしやすいフローリング

フローリングで気になるのは傷ですが、ペットにとって要注意なのが臭いの留まりやすい目地です。また、集合住宅などで多く採用されている複合フローリングの場合は、目地のところに爪を引っ掛けてフローリングを剥がしてしまうことも少なくありません。目地の少ないものを選ぶと安心です。また、フローリングのキズを予防するのにはラグを敷く方法もあります。汚れなどのメンテナンス面から選ぶ場合は、取り外しが楽なもの、リフォームしやすいタイプやパーツになっているものを選ぶとよいでしょう。犬の居場所にするスペースでは、拭き掃除のしやすい抗菌性のシートを使うのもおすすめです。

フローリングのキズ予防には、キズのつきにくい床材やラグなどを敷く方法があります。

置き家具よりも造りつけ家具がおすすめ

カビなどによる環境を悪化させないためには、置き家具を減らすのがポイントです。なるべく造りつけの家具にするとよいでしょう。壁や床に家具をぴったりつけるのは、通気が悪くなり、環境を悪化させてしまう要因です。どうしても置くのなら動かせる家具にし、壁から4〜5cm、床から7〜8cm離して掃除機のヘッドが入る状態にし、空気の流れもつくるとよいでしょう。

造りつけ家具はメンテナンスや収納面・安全面からもおすすめです。

玄関の近くにリード等を入れるスペースを確保

ペット商品の収納場所は、それぞれ異なります。ペットフードの場合は、キッチンなどの食べ物が傷みにくいところがいいでしょう。散歩用のリードは、できるだけ玄関の近くに置くスペースを取ることをおすすめします。人の行動をよく見ているペットは、リードを持ったとたんに散歩がうれしくて吠えたり、部屋中を走り回ってしまうことがあるので、そうならないためにも居場所から見えない場所に収納しましょう。
散歩した後は、人の衣類にもペットの臭いが付着します。衣類は換気機能のない玄関先よりも洗面所などの場所に置くスペースを設けるとよいでしょう。

人もペットも快適な住まいは掃除がしやすい

ペットに癒しを求めるのと同様に、ペットは飼い主が楽しくしている姿を見るのが一番好きで、うれしいのです。ペットと暮らすことで大切なのは、人にとって掃除が楽にできることも大切な要素です。もし、掃除がたいへんで飼い主がピリピリしていたら、ペットだって楽しくはありません。
楽に掃除ができると、ペットと一緒に遊ぶゆとりの時間がつくれます。一緒に遊んでくれる、いつも楽しそうにしている飼い主と一緒にいるのがペットは大好きです。飼い主の心にゆとりがあると、ペットは安心して、お散歩に行っても吠えにくくなります。
ペットを溺愛するあまり、擬人化してしまう人も少なくありませんが、犬は犬、猫は猫として尊重することも大切です。ただし、人と同様に健康への影響を与える住環境には気をつけることも飼い主の役割です。ペットも大事な“家族の一員”ですから。

人にとって快適な住まいはペットにとっても快適な住まいです。かわいいペットの健康は人と同様に気をつけることが大切です。

内容監修:金巻とも子氏(一級建築士、家庭動物住環境研究家)