商品を支える舞台裏 マイクロミストサウナ


家庭でのサウナを「日常」のひとコマに

マイクロミストサウナ開発担当者 : 鈴木康浩

 

「非日常」だったサウナの爽快感を手軽に家庭に持ち込む、という挑戦

2005年10月、複数のガス会社から発売されたマイクロミストサウナ機能付きの浴室暖房乾燥機は、大きな反響をもって市場に迎えられた。新陳代謝を促し、心身のリフレッシュ効果をもたらすサウナ。従来、商業施設でしか享受できなかった心地よさを、家庭で簡単に味わえるようにしたのだからその好評もうなずける。それを可能にしたコア技術こそ、マイクロミストサウナ。開発担当の鈴木康浩はこう語る。「開発キーワードはズバリ"日常性"でした」。家庭用サウナの市場はそれまでも存在していた。が、わざわざ専用室を設置する必要がある、立ち上がりが遅い、大量に水を消費するなど、既存方式にはいずれも無視できないデメリットが伴う。その現状は、彼の目指す"日常性"、すなわち、帰宅して一風呂浴びるくらいの気楽さでサウナも楽しめるべき、という気軽さとはどうしても相容れなかったのだ。


F-W12K1商品写真

マイナスイオンが話題になっていた当時、若い女性を中心に注目されたイオンコンディショナー。その技術が家庭用サウナに発展していくとは、まだ誰も思っていなかった。

2年以上かけた方式の模索。そしてたどりついた、「水破砕」という解答

2001年ごろから、2年以上の時間を費やして様々な技術が検討された。しかし、これという決め手は見つからない。2003年、本格的なプレゼンテーションを含め、いよいよガス会社とのやり取りが活発になった頃、ある市場の声を鈴木は目に留めた。『低湿度・高室温のドライサウナより、低室温・高湿度で発汗するミストサウナの方が、体に負担がかからず嬉しい。でももっともっとマイルドなサウナがあれば』。これをきっかけにミストサウナを考え始めた鈴木は、自社にイオンコンディショナーという商品があることに気づく。これは、マイナスイオンで部屋の空気をリフレッシュさせるもので、当時主として女性をターゲットに販売されていた。この商品が採用していたマイナスイオン発生のための「水破砕」技術が、プロジェクトの行方に光明をもたらすこととなる。


 

自然と同じマイナスイオンを生み出す原理を、サウナの心臓部に

自然界では、滝の周辺にマイナスイオンが多く発生することが知られている。これはレナード現象と呼ばれる原理で、微細な水飛沫が発生する時、水滴はプラスに電気を帯び、その周囲の空気はマイナスの電気を帯びるからだ。この原理を利用したイオンコンディショナーは、ファンや噴射の運動エネルギーを使って水滴を微細に砕くことでマイナスイオンを発生させていた。これが松下独自の「水破砕」技術。このアイデアを、高温の湯にも対応できるように改良すれば、新しいミストサウナができる。しかも、従来よりずっと細かいミストが作れるから、肌にこれほどやさしいサウナを実現する方法は、他にないはずだ!「ここまで来て、ようやく"ゴールへの道筋が見えた"と思いましたね」と鈴木は語る。

水滴径の比較


マイクロミストサウナが作るナノ微細数は、1ミクロン(千分の1ミリ)未満。
「濡れている」と感じないのに、体ぽかぽか、お肌しっとりの効果が。



高効率の水破砕を実現するために、鈴木がチューニングを重ねた心臓部。その名も「サウナエンジン」。

従来方式に比べ、水の使用量なんと10分の1を達成

独自の「水破砕技術」を応用。少量の水を熱交換器でお湯にして、高回転のファンにぶつけることで、目に見えないほど微細化した加湿ミストを発生させるマイクロミストサウナ。髪などが濡れにくいにもかかわらず、肌はしっかり潤うのが大きな"売り"だが、実は水の使用量も従来のミストサウナと比べ10分の1にまで激減。その裏には並々ならぬ苦労があったはずだが、鈴木はあっさりとこう言う。「サウナを使いたいけど水道代が・・・ということでは、やはり"日常性"に欠けますからね」。




「本当は、人に自分の考えを細かく説明するのは苦手」と語る鈴木の商品にかける想いを、丁寧にすくい上げ、形にしていった開発スタッフの面々。

発売1年半前、まさかの “ゼロリセット”妥協を許さなかった“日常性”へのこだわり

しかし、"日常性"というキーワードが、プロジェクトに思わぬ足踏みを強いることもあった。「日常的に使っていただく商品は、メンテナンス面が気になるようではいけないと思っています。だから特別なメンテナンスを必要としないことを条件の一つと決めていたのです」。ところが、ある構造部分の耐久性に疑問が生じたのだ。「抜本的な設計の見直しが必要でした。ほとんど"ゼロリセット"と言っていいくらいの打撃ですよ」。しかし、鈴木はどうしても目をつぶることはできなかったと言う。2004年4月のことだった。それからさらに1年半。鈴木と開発にかかわった全スタッフの努力はようやく実を結ぶ。完成した商品を前に、パートナーのガス会社からは、本人が恥ずかしいくらいだと述懐するほどの賞賛を受けた。そして市場での大成功。この時の手応えを忘れることなく、鈴木は、さらなる施工性の向上、既築など今の商品では取り付けられない分野への対応など、次なるゴールを目指して今日も走り続けている。

2006年2月公開
※本ページの内容は掲載当時のものです。社名や組織名など現在とは異なる場合がございますのでご了承ください。

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