商品を支える舞台裏 ファイ48モーター


モーターというローテクを極め、栄えある賞を受賞

直径48mm(φ48)モーター開発メンバー : 森下本弘



左が従来のモーター。その差は一目瞭然だ。

世界初、最薄・最小容量・最軽量の新構造コンデンサモーターの誕生

薄形Q-hiファンは、大幅な小型・薄型化を実現することができた。その影には、様々な要素技術、部品技術の進化がある。その代表選手が直径48mm(φ48)モーター。従来の半分の容積にもかかわらず同等以上の性能を有し、環境面では省エネ・省資源、そしてクリーン(環境負荷物質対策)を追求した画期的なモーターだ。これを生んだ開発メンバーの一人、32歳の若い技術者、森下本弘に話を聞いた。学生時代からずっとモーターの構造を研究していた森下は、その知識と創意をさらに高めることのできる場所を求め、今の仕事に就いた。彼にとって、モーターの開発はまさに天職といっても過言ではないだろう。


*2004年7月現在。全自動無人化生産対応型として当社調べ。




従来の4分割コア



新開発した特殊8分割
(2極4スロット)コア

従来モーターとの比較

左が従来の分割コアの1パーツ、右が特殊8分割コアの1パーツ。

銅線のロスを最小にとどめることが、小型化と大出力を両立するポイントだった

まず考えたことは、どうすればコアに巻く銅線のロスを最小限にできるかという点。「同じ容積の小形モーターでは、いかに銅損(銅線のロス)を少なくできるかが最大のポイントなんです」。さらにコストダウンというメリットもある。モーターの構成素材の中で銅の占めるコストは意外と高いのだという。「結局は、コア自体から新しい視点で考え直すしかないな」。そう結論し、巻線に最適なコアの分割形状の検討に挑む。パーツ形状を2種類にして、それぞれを4つずつ、計8個のパーツを接合して1つのコアを形成したのだ。




徹底した小型化のため、コンデンサーも2分割した。(上部黄色の部分)

独自のコア分割がもたらした様々なメリット

分割した8個のパーツにしたことで、巻線の整列巻きを可能にし、占有率(スロット面積に対する巻線総断面積)を限界まで高めることに成功した。これにより銅損が削減され、同時に大幅な小型・軽量化も達成できたという。さらに「8つに分割したコアには、それぞれ接着剤が塗布してあり、これらを積層してIH加熱することで接着させます。従来なら各パーツで数箇所ずつだった接合ポイントが、新方式ではコア全体の面接合になりました」。これがモーターに、強度アップと振動防止の両面で貢献しているのだ。「もちろん、これも業界初の工法なんですよ。本当に、このΦ48モーターはブラックボックス技術を凝縮したものなんです」と嬉しそうに語る森下の表情には、工作が大好きな少年の面影さえ漂う。



開発メンバーに対し贈られた「電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)」の盾


開発チームの面々

最先端技術がひしめく中、既存技術の代表のようなモーター開発で、見事オーム技術賞を受賞

このφ48モーターの開発は2005年、オーム技術賞という通称で電機業界にあまねく知られている「電気科学技術奨励賞」を受賞した。他の多くの技術もこの賞にエントリーしていたが、これ以外はすべてデジタル系のいわゆる最先端技術だった。「モーターという技術はずっと昔からあるもので、最先端には程遠い分野。今の時代、そんなに脚光を浴びるようなものじゃありません」と語る森下は、こう続ける。「だからこそ、本テーマの開発メンバーが受賞できたことは驚きでしたね。私たちが手がけた様な地味な技術開発を、会社も業界もちゃんと見てくれている。そして評価してくれている。その満足感は言葉ではなかなか表せないですよ」。優秀さが業界に知れ渡ったこのモーター、現在では社外からの引き合いも続々来ているという。

2006年2月公開
※本ページの内容は掲載当時のものです。社名や組織名など現在とは異なる場合がございますのでご了承ください。

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