住まいと空気の歴史館

換気の歴史は、住まいの歴史。時代とともに変遷してきた、換気と人々の暮らしにまつわるお話です。

換気の第1世代 昔の民家は呼吸していた!? 18世紀~20世紀前半 換気の研究が始まる

昔の建物
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「建物は夏をむねとすべし」

吉田兼好が「徒然草」の中で「家の作りやうは夏をむねとすへし・・・」と綴ったのは鎌倉時代のこと。当時の住まいは、湿気による変質や虫害から守るため床が高めになっており、今でも神社仏閣にその名残を見ることができます。このように、昔の日本の住まいといえば、夏の蒸し暑さ対策が主でした。柱がむき出しの隙間だらけの家。土壁は室内の湿度を調整する機能があり通風に優れていました。また、板張りの床には置き畳や円座を置いて座り、屏風やすだれで区切るなど、風通しを良くするための様々な工夫がなされていました。ただ、冬の寒さには大変弱く、人々は厚着をし囲炉裏や火鉢で暖をとるしかありませんでした。

Fun Fanミニ知識

岐阜県白川村の合掌造りに代表される昔の民家では、自然の力を利用した換気暖房システムができていました。一階の囲炉裏の暖気や煙は、二階以上の蚕部屋を巡り暖め(そのため蚕がよく育ち)、その煙は茅葺きの屋根から抜けていく。呼吸する建物の代表例です。煙に含まれるススが茅(かや)の繊維をコーティングすることで腐食の進行を抑え、屋根を長持ちさせるという効果もありました。

戦後
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バラック建築

住宅難から「とにかく住めればいい」という住宅が建てられたのがこのころ。木製引き戸の障子窓が普及しました。戦後建てられた学校の木造校舎に、その典型を見ることができます。

アルミサッシの普及

戦後の混乱から日本経済が回復するとともに、石油ストーブや石油/ガスコンロが普及。アルミサッシ窓の開発により、住まいの気密性能が高まりました。北海道では、冬の寒さ対策のために、グラスウール断熱材の導入も始まりました。

Fun Fanミニ知識

日本では、建築基準法で、居室(床面積の20分の1以上)に採光と換気のための開口部(窓)を設けるように定められています。

換気の第2世代 公団住宅でサンマはご法度!? 1950年代〜 煙や臭いの排出(局所換気)

団地
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「排気扇」から「換気扇」へ 集合住宅の拡大 団地ブーム

戦後の混乱もようやく落ち着き始め、RC(鉄筋コンクリート)構造の市営・県営・公営等の集合住宅が全国的に増え始めました。それまでの木造住宅に比べ、格段に気密性の高い住まいに暮らし始めた人々は、台所で魚を焼くたびに家中が煙だらけになって困っていました。そこで集合住宅の供給側は、急ぎ台所への換気扇の標準装備化に取り組むことに。これに伴い、浴室の湿気やトイレのにおいを排出するための換気扇も普及し始めます。

Fun Fanミニ知識
換気扇はゼイタク品?

日本では大正時代から映画館や病院など工業用途を中心として「排気扇」と呼ばれる商品がありました。パナソニックは、1958年(昭和33年)、公団住宅用に開発した「排気扇」を「換気扇」として発売しました。当時の「換気扇」の値段は8,000円前後。大卒の初任給が8,000円~1万円という時代でしたから、まさにゼイタク品でした。今では「換気扇」は広く使われる、身近な商品となりました。

換気の第3世代 わが家が腐る!? 気密・断熱の時代 1970年代〜1990年代 湿度を排出

気密・断熱住宅
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現代の住まい 気密・断熱住宅

オイルショックなどを経て、人々は省エネ、かつ快適な住まいを求めるようになります。寒冷地を中心に、暖房効率をより高めるアルミサッシ、新建材、グラスウールなどを用いたマホービン構造の気密・断熱住宅が普及していきました。また、建物の設計自由度を上げるため、壁付け換気扇からダクト式換気扇が求められるようになりました。
その一方で、冬季に窓を閉め切るせいで部屋に湿気がこもり、結露が生じて家が腐ってしまう問題が発生。住まい全体の換気を考える必要性が出てきたのです。

Fun Fanミニ知識
熱交換気とは?

断熱性が高く、快適な温度の部屋でも、換気のために外気を取り入れると、屋外の熱気や冷気のせいで室内温度が変わってしまいます。そこで考え出されたのが、熱交換素子を利用した熱交換気。特殊加工した紙などを重ねて作られた熱交換素子の間を、給気された空気と排気される空気が混じり合わずにすれ違います。その際、それぞれ空気の熱だけを、素子を介して交換。換気をしても、快適に空調された室温が変動しないような仕組みです。居間やオフィスなど、常時換気に適した換気扇で使われています。

換気の第4世代 シックハウス対策で、ますます換気が必要に 1990年代〜 VOC(化学物質)の排出

高気密・高断熱住宅
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居室における機械換気設備の義務化

建材の多様化で住宅の気密性がますます高まる中、シックハウス症候群が社会問題となってきました。これは、新建材などから発生する化学物質で室内空気が汚染され、室内にいる人に目や喉への刺激・頭痛・めまい・吐き気・喘息などを引き起こさせるものです。日本では、主に室内の揮発性有機化合物(VOCs)の濃度を低減するために、住宅メーカーや、壁材・床材・接着剤・塗料などを供給する建材メーカーが対策に取り組んできました。しかし、VOCsは建材だけではなく、家具等からも発生します。また、喘息やアレルギーなどは、VOCsだけが原因とは限りません。そのため、住まいの空気質をいかに新鮮に保つかという視点から、機械換気設備の義務化が法制化されました。

換気の第5世代 IAQの向上、スマートウェルネス換気の時代に 2010年代〜 第3種換気から第1種換気へ

ZEH(※1)
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「スマートウェルネス換気」に関心高まる

花粉や黄砂、PM2.5など外気の汚れが暮らしに影響を与えるようになり、これまで主流だった汚れた空気を排出するだけの「第3種換気」から、安定した換気が可能で、汚れた外気を室内へ取り入れないように配慮できる第1種換気「エアテクト」シリーズが注目されるようになりました。
熱交換タイプもますます進化し、季節に合わせて最適な換気を行うIAQ制御も登場します。

また住宅においては、地球温暖化やエネルギー問題で国が普及を進めるZEH(※1)や省エネだけでなく、ウェルネス(健康)という観点からも長く安心して暮らせる性能が求められるようになってきました。
人は長い時間を室内で過ごし、多くの空気を体に取り入れることから室内の空気質(IAQ)を向上し、上質な空気環境を整える「スマートウェルネス換気」に関心が高まっています。

※1 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・・・住宅の断熱性能向上と高効率な設備で室内環境の質を維持しつつ、省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間のエネルギー消費収支がゼロとすることを目指した住宅。

家族の健康のためにも、住まいの空気質に気を配ることが大切です。