パナソニック エイジフリー株式会社の特徴は、開発と介護現場の近さにあります。
“困りごと”がすぐに伝わり、解決策を商品化。加えて、先進的な技術を背景に市場への新たな提案を打ち出していくのもパナソニックならではといえるでしょう。
開発者とサービス拠点の営業マン、ケアマネージャーの4人が、この秋発売された新商品「家具調トイレ座楽」と「FUNレストテーブルα」を題に、それぞれの思いを語り合いました。
久山 知子(くやま・ともこ)
パナソニック エイジフリー(株)
ライフサポート事業部
ケアマネジメント部 課長
「昨年4月から東京に単身赴任中。主任介護支援専門員。介護福祉士」
増子 祐介(ますこ・ゆうすけ)
パナソニック エイジフリー(株)
エイジフリーショップ 千葉船場
福祉用具専門相談員
「入社2年目の新鋭。主に船場市の北部から鐘ヶ谷のエリアを担当。社内の販売コンテストで1位に」
坂口 智彦(さかぐち・ともひこ)
パナソニック エイジフリー(株)
ケアプロダクツ事業部
商品企画開発部 主事
「ポータブルトイレや入浴用品などの開発を担当。福祉住環境コーディネーター2級」
河本 元(かわもと・はじめ)
パナソニック エイジフリー(株)
ケアプロダクツ事業部
商品企画開発部 主任
「長年、電動ケアベッドや介護用マットレスの開発に従事。今回初めて新分野の商品開発に挑戦」
取材・記事制作:月刊ケアマネージャー
― パナソニックのものづくりに対する考え方を教えてください。
パナソニックグループ全体の力を利用するのが大きな特長です。
企画段階からデザイン部をはじめ、いろいろな部署の人に入ってもらい、外観はもちろん、機能面についても全社の力を借りて進めています。
パナソニックには解析センターという組織もあり、人間工学に基づいた最適な使用性を実現するための評価技術とデータを蓄積しています。それら長年培ってきたノウハウを新商品の開発に役立てています。
―そうした力を結集してつくられた新商品の特長は?
『 家具調トイレ座楽』を5年ぶりにリニューアルしました。一番の特長は、バケツです。使用に際して一番課題がある部分に注目し、形状を思い切って丸くしたことで、捨てやすさ、処理のしやすさを追求しました。ほかにも、フタの置き場所や肘かけの操作、便座の形状などさまざまな部分を改善し、サイズを全体にコンパクトにすることで、より使いやすく、手入れしやすい商品になったと自負しています。
『 FUNレストテーブル』は、好評だった基本コンセプトはそのままに、人間工学に基づく寸法とトイレ空間を考慮し、施設だけでなく、住宅でも設置できるように長短2つのサイズを用意しました。
―新商品を見た感想はいかがですか?
大事なのはサイズです。特に住宅は、居住空間に制限があるため、設置する上で大きな判断基準になります。どちらもコンパクトなサイズになっていることに加え、本人も介助する人も扱いやすい改善が施されており、パナソニックならではの商品となっていると思います。自信をもっておすすめできますね。
『座楽』は、掃除がしやすく、介護者の負担を軽減できるのが大きなポイントです。また、フタの置き場所なども意外に厄介なので、いいところに目をつけたと思います。すすめやすい商品ですね。『FUNレストテーブル』は、以前、脊髄損傷で下半身不随の利用者さんの自宅での状況を見て以来、「こういうものがあったらいいな」と、ずっと思っていました。まさに、待望の商品といえます。
利用者に提案するためには、まず自らが商品の特徴を把握する。
―開発で苦労した点を教えてください。
バケツをリニューアルするためのアイデア出しに一番苦労しました。「流しにくい」「飛び散る」「汚れが一発で落ちない」など、さまざまな課題への具体的な解決方法を見つけるため、モデルハウスを借り、高齢者装具を装着した私が擬似便で満たしたバケツを持ち、2階の寝室から1階のトイレに移動して中身を流す、といったテストを繰り返し実施しました。ご高齢の介助者の苦労が理解できたおかげで、バケツ改善への思いが強くなり、開発にいっそう力が入りました。
『FUNレストテーブル』は、施設だけでなく住宅への設置を考え、2サイズを展開しているのですが、そのサイズ調整に苦心しました。安全性の高い座位姿勢がとれ、住宅のトイレ空間でも設置できるテーブルサイズを決めるために、木材で製作したサイズ違いの模擬テーブルを15パターン準備し、高齢者でのモニター評価に一番時間と手間をかけたことで、商品のブラッシュアップができました。
―商品を選ぶポイントは?
体の状態や体型ですね。ご本人だけではなく、介護者の方の状態も併せて考え、ADLやQOLを高めるにはどれが一番いいのか。いろいろな要素がある中、どこに一番重きを置くかが決定要素になります。
私はケアマネジャーとして、その人がどういう生活を望んでいるのか、これからの人生をどう歩んでいきたいかについて、一番考えています。そして、介護者の負担軽減も大きな要素です。
― 最後に皆さんの今後の目標を教えてください。
ご本人、介護者を含めて、少しでも使う人の尊厳が守れるもの、「これがあってよかった」と思ってもらえる、お役に立てるものを作っていきたいですね。
使う人の生活やそれに関連する行為が少しでも楽になることを追求したモノづくりを、これからも続けていきたいと思っています。
困りごとの解決の方向性が伝えられない人が少なくありません。しっかりと聞き出し、それに対して最適な提案ができるよう、相談員の役割を追求していくつもりです。
その人の長い人生の終盤10%ほどの期間に関わることができるのが私たちの仕事。最後に「よかった」と思っていただけるような、そういう支援がしたいと思っています。
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