取材日2017年2月
「小さなボタンが押しづらい」「機能が多すぎる」といったテレビのリモコン操作に不自由を感じておられる高齢者や、手の不自由な方の声をじっくりお聞きして開発した「レッツ・リモコン」。
使いやすいリモコンを提供するだけにとどまらず、テレビをもっと積極的に楽しんでいただきたいという願いが根底にあります。
介護の専門家である「ケアマネジャー」と「福祉用具専門相談員」、そして「開発担当者」が、この商品の意義や可能性を語りました。
健康な人や若い人は、情報源といえばスマートフォンやパソコンであり、人との関わりも多いので、知らず知らずのうちにさまざまな場面から情報を得ていると思います。しかし、介護が必要な高齢者や手の不自由な方にとってはテレビが情報源です。とくに外出が不自由になるとテレビは社会との貴重な接点として、その存在は大きなものなのです。
在宅ケアをされているお宅でよくある状況が、テレビのつけっぱなしです。チャンネルも変えず、見ているのではなく「ついている」だけの状態になっています。
「つけっぱなし」になってしまう背景には、手や身体が不自由になってリモコン操作ができなくなると、テレビ自体への関心がうすれてしまうという問題があります。「この番組が見たい」といった自発的な気持ちがなくなって「ついていればいい」という無関心なレベルになってしまうのですね。
リモコン操作ができなくなると、まずテレビへの関心がうすれ、それ以外のことに対しても関心がなくなってきます。
たとえば、高齢になってリモコン操作が難しくなると、ご家族やケアスタッフ、看護師などが、本人に代わってリモコン操作をすることになると思います。でも、「テレビのチャンネルを変えることで呼びつけても」と遠慮して希望を言わずに我慢しているうちに、テレビそのものに関心がなくなってあきらめてしまうことがあります。あきらめると刺激が少なくなるので、身体や心にも悪い影響を与えることになります。
介護生活では「あきらめない」環境を用意することが大切です。
介護用品は、不自由が解消して生活を快適にするために使うものです。たとえば歩行が不自由になれば車椅子、入浴しづらくなったら入浴介護用品を使うわけですが、不自由を解消するテレビのリモコンはありませんでした。「かんたんリモコン」というような、機能を制限したタイプはありましたが、レッツ・リモコンに比べるとボタンも小さく、高齢者や手の不自由な方が使いやすいものではありませんでした。
一般のリモコンにある複雑な機能は徹底的に省き、高齢者や手の不自由な方の使いやすさを追求しました。
ボタンは指先だけではなく、こぶしや親指などで押すこともできます。
ボタン操作が難しい場合は、身体状況に応じた外部入力スイッチ(別売)を接続し、ひじや頬など動かせる部位で操作ができます。(ADのみ)
一般のリモコンは赤外線信号の発信部が1方向なものが多く、高齢者や手の不自由な方の中には、テレビに赤外線信号を向けにくいことがあります。レッツ・リモコンは赤外線信号の発信部が複数箇所あり、リモコンをテレビの方に向けなくても信号が届きやすいです。また、BS/CSボタンなど、人によっては使わない機能をあらかじめ無効にするなど、使う人に合わせた設定もできます。
どんなに高度な医療を受けても、テレビを見る楽しみもなく、病院や施設の白い天井だけを見て過ごすのはとても悲しいことだと思います。テレビは情報源だけでなく、楽しさやうれしさにもつながる大切なものだから、どんな人にもテレビを楽しんでほしいという願いが開発の根底にあります。
開発にあたっては、高齢者や手の不自由な方にお話を伺い、製品への反映が難しい課題はあきらめるのではなく、別の方法がないかを考えました。例えば「なくさないリモコン」という要望があったのですが、解決策は視点を変えて「見つけやすいデザイン」を追求。リモコンのオモテ面はカラフルなボタンの色を目立たせるために白色になっているのですが、ウラ面も白色だとシーツの色と紛れてしまうため、ウラ面と側面の半分をグレーにすることで「見つけやすいデザイン」にたどりつきました。
見つけやすいよう、側面は白とグレーのツートンカラーになっています。